Nekubo

シン・ジョーズのNekuboのレビュー・感想・評価

シン・ジョーズ(2016年製作の映画)
3.5
なるほど「シン・ジョーズ」とはよく言ったもので、核により生まれつき被曝したサメが襲うサメ映画。邦題が邦題だけに敢えて映画としてではなく生物としてのシン・ゴジラと比較するならば、意外にも似通った存在の生物だった。

要はコチラのシン・ジョーズさんもシン・ゴジラよろしく最後の最後まで明確な行動理由や出自が明かされないのだ。まぁ、サメ映画のサメなんてそんなものといえばそんなものなのだけど、このシン・ジョーズに関してはその「よくわからなさ」みたいなものがむしろキャラクターになっているので、そういう意味でもシン・ゴジラっぽい。

さて、自分で書いておいてなんだがシン・ゴジラとの無意味な比較などは止めにして、本作品の紹介と感想を始めます。

それは突然やってきた…。赤く熱を帯びた背びれを海面に突き出し、黒煙を撒きながら泳ぐ謎の影…。

舞台はカリフォルニア州、サンディエゴのとあるビーチ。そこではいつからか魚の焼死体が浜に打ち上げられるという不可解な事件が起きていた。環境保護に熱を入れる女学生のジーナと落ちこぼれのライフセーバーのカプランはその原因を独自に調べ始めるのだが、その先に待ち受けていたのは驚きの生物の存在だった!

まず、登場人物に関しては、ライフセーバー、環境保護系男子or女子、ワケありの船乗り、ビキニ美女とサメ映画にはお決まりのキャラクターをしっかりと投入している。しかも全員がそれなりにキャラ立ちしているので、ドラマ部分はそれなりに安心して観ることができる。

とはいえ、基本的にやっていることは近年量産されまくっているB級サメ映画と同じで、主人公等がサメの戦い方を模索し、途中途中にビーチの管理人だとかが「俺のビーチで好き勝手するな!」と主人公達の邪魔をする。その合間を縫ってサメは人を襲い、終盤あたりで実はサメのことを知っているワケありの船乗りが主人公等の助っ人に現れて最終決戦…という流れ。

近年のローバジェットなサメ映画はテンプレートになってしまいがちなドラマ部分よりも、突拍子もないシチュエーションやサメ自体のアイデア(竜巻と共にやってくる某サメ映画や文字通り頭数の多いサメ映画等)に力を入れる傾向があって、そういったサメ映画のドラマ部分が全然面白くない理由にはここらへんが大きく関係している。

この『シン・ジョーズ』に関してもソコに陥りかけてはいるのだけど、多少はドラマに気を遣っているようで、例えばヒロインのジーナとワケありの船乗りが彼女の実の父親で、しかも二人のあいだには過去の大きなわだかまりがある。それをサメの退治と共に解消できるような脚本にしていて、そこは上手くいっているとは言い難いがそれなりに燃えるシチュエーションに出来てる。

それからサメとの最終決戦に挑むメンバーにもこだわっている。ジーナと船乗りのワケあり親子、落ちこぼれのライフセーバー、ドローンを駆使する盗撮マニア、金儲けのことしか考えてない環境保護を謳うバカな二人組という、いわゆるおちこぼれチームを結成させており、最終決戦直前に彼らが一致団結してサメに立ち向かうという展開もまた燃えるのだ。

途中途中に挟まれるコメディ要素は残念ながらすべっているから、そこは完全に蛇足。たしかに主人公のカプランがひょうきんなキャラクターなので、どうしたってコメディ色が出てしまうのだけど、サメによる人死には多いし、サメもコメディに振り切った突拍子もない暴れ方をするわけじゃないから、そこは手堅いモンスター映画にしてもよかったのではないかなと思う。

シン・ジョーズこと被曝したサメのヴィジュアルはかっこいいです。全身の皮膚は赤く焼けただれたようになっていて黒煙を纏いながら泳ぎます。それこそ本当にシン・ゴジラのようなヴィジュアルをしています。それだけに活躍するシーンが今一つ物足りなかったかなとも思う。もう少し全体像をのんびり拝めるくらいの露出が欲しかった。

というわけで、こんな邦題からろくでもない映画に思われそうな気もするけれど、それなりのセンスを持ったサメ映画です。サメ映画ファンは一度ご覧あれ!
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