バナバナ

ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれたのバナバナのレビュー・感想・評価

3.8
ボストンマラソン爆破テロ事件の被害者、ジェフ・ボーマン氏の回顧録を映画化した作品。

普通のアメリカ映画では、必ず被害者をヒーローチックに描きますが、この作品では、
ジェフさんが膝上から突然両足を失い、その現実をまだ受け止めきれていないにも関わらず、
彼が重傷にも負けずに生還した事や、犯人逮捕にも貢献した事から、
人々から“ボストンストロング”と称賛される様になってしまう。

しかし、それは今の現状や、本当の自分とは余りにかけ離れ過ぎていて、そのギャップに心が付いていけず、自分を見失いかける情けない姿が正直に描かれています。
それは絶対に、『愛は地球を救う』の再現ドラマでは描かれない様なリアルさで…。
ですので、ジェフさんがのたうち回る姿が余りに痛ましく、決して楽しい映画ではありませんでした。

しかし、有名人に会えて浮かれている実母や、痛みを知らない人からの称賛は辛かったけれど、実際に苦しみを背負っている人達には、生き残った自分の姿を見てもらうだけでも励ましになっているのだと実感ができた時、彼の本当の再生が始まったのです。

そのきっかけとなった、事件時に彼を助けたカルロスさんはコスタリカからの移民だそうですが、爆発時は反対側の歩道に居て、まだ何発爆発するのか分からない状況だったのに、爆発した側に飛んできてジェフさんを助けたそうです。
ネット上でも見られる事件直後の写真を見ると、車いすに乗せられて走るジェフさんの大腿動脈をカルロスさんが素手でつまんで、止血しながら隣を追走する姿が写っています。
カルロスさんのこの行為が無かったら、ジェフさんは亡くなっていたでしょう。

しかし、カルロスさんは「あなたを助けた事で、自分も救われた」とジェフさんに語り始めます。
ここで初めてジェフさんは、今自分が生きているのは、誰かの助けによって生かされている事。
また、自分も生き続けることによって、誰かに影響を与える事ができるのだと、生きる意味を見出す姿が感動的でした。
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