NicoJay

ラン・スルー・ザ・ナイトのNicoJayのネタバレレビュー・内容・結末

ラン・スルー・ザ・ナイト(2016年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

原題『Чистое искусство』を機械翻訳すると「ピュア・アート/純粋芸術」と出ますが、どうも本編としっくりきません。
英題は『Mortal Affair』で「死と隣り合わせの情事」。しかし主人公は情事を楽しむタイプではまったくなく、むしろ異性との交際に慎重な態度を示していますから、これもおかしい。
結局のところ邦題『ラン・スルー・ザ・ナイト』がいちばん腑に落ちる気がします。

主役のサーシャを演じるのはロシアの女優Anna Chipovskaya。1987年生まれとのことで、本作の年齢設定28才と合致しています。
それにしても日本版DVDジャケットは酷い。男心をそそる裸シャツ姿で手には映画に出てこないベレッタ92。その左には赤いスポーツカーと派手な爆発。そんな場面も見た記憶はまったくなく、これこそ”贋作”でありましょう。

それはさておきこのサーシャ、典型的な巻き込まれ型の逃亡者なのですが、知的で勘がよく行動力もあるので安心して観ていられます(車の運転もめっぽう上手いらしく)。
また本作は映像における光と影、色彩の使い方にセンスがあって、画面がきれいです。

一方、筋書きはツッコミどころだらけ。
FSB(ロシア連邦治安局)の長官がさらに上から命じられて捜査を指揮しているという国家規模の話であるにもかかわらず、そういった緊迫感やスケール感が描けていません。
黒幕がサーシャに向かって事の真相をベラベラしゃべり、話し終わってサーシャに銃を向けたところで撃ちコロされるなぞ、そんな安直な脚本でいいのかと。
FSB長官がニューヨークに電話をかけ、メトロポリタン美術館からロシアが赤っ恥をかくことになる絵画(贋作)を強奪させたとかいう筋書きも、何の冗談かと思うばかり。

ですがわりと楽しみながら最後まで観られたのは、真相に向けて突き進む主人公が頼もしく、他にもイラッとする(わざとらしくドジを踏んで足を引っ張るような)ウザキャラが出てこないからのような気がします。
あと主人公が美人でスタイルもよく、映像も絵的にきれいだから。

ただ、行き場のないサーシャを匿ってくれたばかりか車を貸してくれたりもしていた古い友人のタマラ(Evgeniya Malakhova)が、何も悪いことなどしていないのにコロされちゃったのは酷いと思いました。

このタマラ、出版社の編集長という役設定ですが都市部にある豪華なアパートメントに住んでいて(主人公もその部屋を見て「成功したのね」と言っています)、国土が広いと建物のスケールも日本と大違いだなぁと思ったり。蛇足ですけどね。
NicoJay

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