突然前触れもなく恋人の死。
悲しみを無理矢理消すことなど出来ないから、幾つもの夏を重ねて、僕らは少しずつ君との別れを認めていく。
エリック・ロメールの影響を受けたような絵画のような美しい映像詩。
無駄な台詞は一切省かれ、登場人物たちの繊細な心情は表情の変化だけに見て取れる。
心の穴は、完全には埋まらなくても時間の経過とともにそこに吹くすきま風が少なくなっていくのが人間の性でもあるから、どんな深い喪失感にも終わりが来て必ず再生の時が訪れる。
登場人物たちが大切な人の不在を見つめる静かな悲しみの演技がとてもリアリティがあり、エモーショナル過ぎない死との向き合い方が好きな作品。
悲しみから始まる作品ではあるものの、ベルリン、パリ、ニューヨークと三都市を巡る夏の風景がとても心地よく、鑑賞後の心地が良い作品でした。