海

サマーフィーリングの海のレビュー・感想・評価

サマーフィーリング(2016年製作の映画)
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とても大切にしている小説に「ひとは失ったもの以上に何かを愛せない」という文章があって、はじめて読んだときから心から消えない。ひとが誰にも見せずに隠し続けている秘密の一つがそれなんだと思う。去ってしまったものごとのことをわたしはいくらでも待っていられる気がする。いつも比べてしまう。よく知ってる女の子とわたし。よく知らないひととわたし。あなたとわたし。あなたの見ている方と、わたし。どれだけ比べ続けても、わたしは誰かと居るほどひとりになるし、温かく眠れる夜ほど寂しくなる。これでいいんだろうかとおもう。終わってしまったことの続きをいつでも生きているということや、失ってしまったもの以上に何かを愛せないだろうということを、悲しいと思うさみしいと思う、忘れて笑っていたいと思う。でもわたしは同時に、それを愛したいと願っていることを、この夏を見ながら、思い出しました。わたしがひとりで書く言葉、何かを失いながら書く言葉、手放せないもののために書く言葉、そして生きている生活があるの、読書に夢中で日焼けした太もも、新しく開けたピアスの穴、昨夜観た映画の話、誰かにあげられないわたしがあまりに増えすぎたからって悲しむことはなかった。わたしはわたしのためにあるわたし、でずっといたかった。一人で泣きたいときにただじっとそばに丸まっていてくれる猫、何を考えてるんだろうと額に頬をくっつけるとき、人間にできる「愛」は「愛」で終わりなんだということがよくわかるんだよ。わたしの知らないところでひらいた花があなたの中にあって、あなたの知らないところで育ち続けている植物がわたしの中にあるのが、よくわかる。ひとは証拠のないものをすぐに見失ってしまうから、だからひとりになる。あなたの背中からじゃ、あなたの顔は見えないから、だから、ひとりになる。自分と誰かのあいだには、気づかないあいだに過ぎ去ってしまった時間があり、その長さや、留まりや、成長が、そのひとだけの秘密であったことのために泣くとき、わたしはひとりでいたい。
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