このレビューはネタバレを含みます
1001のバイオリンだけ観た。
余韻が強力過ぎてまだ他の作品を観れていない。
2017年にクラウドファンディングで資金を集めて上映されたオムニバス映画「ブルーハーツが聴こえる」の六話目、李相日が撮った作品。
豊島悦司が福島原発の爆発のあと、家族と共に東京に避難した元作業員を、三浦貴大が今も作業員を続けている若者を演じている。
若者は結婚している連れ合いとの間に子どもが出来たことから毎晩、夢にうなされるようになって、それを断ち切りたくて東京の元同僚を訪ねて来たのだ。
その元作業員の方は、可愛がっていた犬のタロウを避難する際に置いてけぼりにしたことを後悔し続けている。犬と共に大事なはずの何かと一緒に。
その犬を二人が共に双葉町に戻って探しに行く物語。
震災以降の8年を思った。僕は東京でデモをたくさん歩きながら、どこか心がチクリと痛んだことを思い出す。登場人物の誰もが自分たちのように思えた。一緒に東京オリンピックの弾幕に立ちションしたかった。タロウを一緒に探したかった。
この8年間、ずっと希望の道具を探していた。李相日はインタビューでそれを「良心を掴み直さなくては」と表現していた。多分同じことなんだと思う。
怒りを表に出せばすぐ冷却装置が「スルー力」の名の下に勝手に働くこの世界の諦念を、吹き飛ばすくらいに強く走るしかないのだ。
良い映画を観た。矛先は間違っていない。