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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのMのレビュー・感想・評価

4.6
A24は世界観のなかに象徴的なアイコンを組み込んで製作するのがほんとに上手いな、っていうのはどの作品にも言いたくなる感想なんだけど。
加えて本作は、鑑賞者が視覚や聴覚からインプットしうる情報(≒演出)をできるだけ削ぎ落として究極にミニマムな作りになっているのに、シーンの繋ぎ方など随所に技巧を凝らしていてちゃんとストーリーに起伏があったから、なんというか豊かだった。
ゴーストの視点から見る「家」にはいろんな感情が渦巻いてた。

基本的に淡々と進んでいく作中で、夫を亡くしたあとルーニー・マーラ演じる妻がパイを食べ続けるだけっていう、結構な長尺でただひたすら静謐なシーンがあって。
悲しみに暮れているのに食欲はあって、妻は自分だけが生きていることを実感してるんだろうなと思いつつ、でも永遠と食べ続けるから何日も、下手すりゃ何週間もろくに口にしてなかったんだろうなっていう喪失感に共に打ちひしがれ、そして最終的には吐いてしまうところで無理にでも夫の死を乗り越えようとしてるのを感じ取り…
わたしは映画における食事シーンを、人間の根源的な欲求が透けて見える気がして重視しがちなんだけど、上記の長回しカットは特に印象に残ってる。
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