生きている人間とは違う、長い長い時間が流れる。
妻との思い出の家から動かない地縛霊。大きな布をかぶってたたずむだけに見えるのに、目の部分に開いた穴のゆがみや、布のくたびれ具合から、ゴーストの感情を読めるような気がしてしまう。
パイを食べるシーンは長い。長いのは、それだけの意味が込められているから。とても悲痛で印象に残った。
後半、時間軸がよくわからなくなるシーンは難しい。今がいつなのかわからなくなるくらいに長い長い時を過ごしてきたということなのかな。でも「今がいつ」は、きっと彼には関係なくなってるし、執着するただひとつの目的しか見えていない。
静謐だけど退屈ではない。暗くも明るくもない。不思議と心地よい映画でした。