ER

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのERのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

とんでもない映画でしたね……

1人の幽霊が生まれて死ぬまでが描かれているけれど、幽霊が言葉を発言することはなく、ただ一切の事象が流れていく。

その中で幽霊は誰にも認識されることなく、そんな状況で幽霊が存在する理由とは?生きる目的とは?を静謐にシリアスに淡々と問いかけてきて、自分の立場になってグッときた。

静かなシーンの使い方がめちゃくちゃ上手くて、ただパイを食べてるだけなのにその中で悲哀や絶望や覚悟といった感情の変化が雄弁に伝わってくる描写とか、静謐の描き方の巧妙さに「とんでもない映画だ……」と圧倒された。

私は観ながら「この後こうなるのかな」と考えながら映画を観るけれども、その推測を軽々超えてくるスケールの大きさも観てて楽しかった。例えば彼女が家から去っていったあと、「後でおばあさんになった彼女と同じ家で会うんだろ」と邪推していたけれど、そんなことを考えていた自分の推察の浅さが恥ずかしくなってくらいその後の展開のスケールが大きかった。意外性という意味でも、観ていてインパクトがあった。

最終的に主人公の幽霊は、自分にとっての「生きる目的」を達成する。けどその「生きる目的」について、本当にそれでよかったのか、そしてこの幽霊を通して自分自身を振り返ってみて、果たして自分の「生きる目的」とは何になるのか、そんなことを確かな充足感とともに改めて考える機会を与えてくれた。かなり満足度の高い映画だった。
ER

ER