edi

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのediのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

幽霊の話。

妻と暮らしていた男が突然死んで、残留思念が家に残り、いわゆる地縛霊になってしまう。

自分が何者か、どうしてここにいるのか、わからないまま、そこにずっと居る。
人格もなくなっているので、人の姿ではなく、シーツを被ったような姿をしているが、これは我々に分りやすくしているのであって、本当はただの”念”の塊なのだろう。
妻は家を去り、幽霊だけになってしまう。

その後、何度も住人は変わっていくが、幽霊はずっとそこに居続ける。

ある住人がパーティーをしているとき、一人の男が酔って話し出す。

「ここにいる人と、その子供もみんな死ぬ。
だから人は生きた証に遺産を残そうとする。
ベートーベンは交響曲を残した。
人類がいずれ滅亡しかかったとき、残った者はベートーベンの曲で勇気や希望をもらうかもしれない。
だが、それも続かない。地球は消滅するからだ。
他の星に移り住んだとしても、結局、宇宙自体がいずれは消滅してしまう。」

かなり要約したが、このような話を熱く語り始めて、せっかくのパーティーなのに、周りの人はドン引きだ。

男の話の内容は特別な事柄ではないが、このシーンを入れてくるということは、これは幽霊の、いや、死者の話なんだろうなと思った。


私は、人が死ぬと宇宙が消えると思っている。
宇宙から死んだ人が消えるのではなくて(いや、それもあるけど)、宇宙が、世界が、この世が、その人とともに消えてしまうと思うのだ。

この話を人にすると、「ああ、その人の宇宙がね」と言われる。
確かにそうなのだが、そんな軽い事ではなくって、宇宙が丸ごと一つ無くなってしまうのだから大変なことだと思うのだ。

そして、死者にとっては1年も100年も100億年も同じこと。
パーティー男の言う、人類や地球や宇宙の消滅は、人が一人死ぬのと同じことではないだろうか。


そして、幽霊は時を超える旅をする。

観る人によって、感じ方は様々だろうが、私は今まで独りで考えていたことが表現されているような気がして、とても感動した。
edi

edi