Automne

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのAutomneのレビュー・感想・評価

4.0
静謐。淡々と流れてゆく気の遠くなるような時間を、台詞で多くを語らずに内面を想像させるものにしているのが良かった。輪廻で循環するような構造は東洋的仏教的宇宙観で面白い。
映画としての余韻やドラマを重視するならば、より日常や死後の日々を掘り下げて、家出てゆく前半パートで終わらせるのが王道だけど、取り残されてなお記憶が朧げになってなお何かを待ち続ける幽玄の孤独をみせつけるにはこの方法しかなかったのかも。
思うに、諦めることこそが死にもっとも近い観念のような気がしていて、私たちは生きてる間に怠惰に生きていたら、諦めて生きていたら、後悔がのこるしそれに気づくことができない。
幽霊になってから、諦めずに愚鈍に何かを待つ姿勢(しかし既に死んでいる)というのはその姿勢、その存在としてとても皮肉であると思った。
永久のときが経つと、代替が現れたから消えてゆくというのは存在としてかなしい。
何かを見つけたり何かに気づいたときに心の中でわだかまりが解けたり、なんらかの成就をして消えるのであればハッピーエンドな気がした。
どちらかというとそうではなく、本作は永久の果ての"寿命での老衰"に近いと思った(幽霊だけど)。
個人的には前半パートの見せ方だったりが映画として素晴らしかったので、構造に捉われずしっとり描いた方がタイプだったかも。ゆえに構造を重視したことで前半の重みが少なくなっている。
こんな風にして輪廻感が斬新なものがアメリカで広く受け入れられつつあるのには好感。もしかしたら30年後とかに千と千尋が本当の意味で再評価される(日本人の分かっていた良さを欧米人が分かるようになる)時代がもうすぐ来るのかもしれない。佳作です。
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