しば

夜明け告げるルーのうたのしばのレビュー・感想・評価

夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)
2.6
舞台は小さな漁港の町「日無町」。主人公のカイは親が離婚したことから東京から日無町へ引っ越してきました。
心を閉ざしたカイの趣味は、パソコンで打ち込んで曲を作ること。カイの作った曲に魅せられた同級生の遊歩と国夫からバンドを組まないかと誘われます。
バンドの練習をしていたところ、どこからともなく歌声が聞こえてきます。その正体は、音楽が好きな小さな人魚ルーでした。ルーは水を自在に操る能力を持っており、愛らしくも様々なトラブルを引き起こして行きます。
ルーに気に入られたカイは、大きな騒動に巻き込まれて行くのでした。

ダイナミックなアニメーションで、有機的な水の表現や大胆に崩した作画は見ていて面白かったです。特に、ルーが操る水はキューブ状にゆらゆらと動くという発想がユニークでした。
ジブリや新海作品ほど書き込まれた絵ではなく、あっさり目の作画。
しかしながら、非常にヌルヌルと動く作風なのが、湯浅監督の持ち味なのでしょうか?
一部作画崩壊かと思うくらいに作画を崩したシーンが度々ありますが、それもこの監督の味だと思えば面白いと思います。

どうしても終始「崖の上のポニョ」を連想してしまいました。人魚のルーの喋り方や容姿もポニョ感が否めません。災害を巻き起こすところもポニョと一緒です。
監督なりのジブリへの挑戦なのかもしれませんが、正直それを越えられた作品ではないと思いました。

どうしてもポニョの二番煎じ感が拭えないのは置いといても、主人公に感情移入ができない上ストーリーの展開も唐突です。
まず主人公。両親の離婚が原因で心を閉ざしていますが、どうしてここまで彼が屈折した性格になったのかの具体的な描写がなく感情移入しづらいです。ルーとの出会いによって急に性格が明るくなるのも少し突然すぎる気がします。

ストーリーの展開も甘いです。
ルーの父親は馬鹿でかいサメのような見た目で喋ることができません。謎のジブリ感を出そうとしてスベってるように見えます。
町おこしのためにルーを利用しようとする大人が現れます。ライブでルーが暴走してしまい大人たちに捕らえられ、怒りに激昂したルーの父が暴走して大人たちを襲い、祟りが起こり町中が洪水に巻き込まれます。

歌が重要な役割を握っており、斉藤和義の「歌うたいのバラッド」が作中で何度も歌われます。主人公が歌を歌い始めると何故か全てが丸く収まるのです。
相当怒っていたはずの父親もなぜかあっさり許していて、「え?それでいいの?」と思ってしまいました。歌をプッシュする割には説明不足すぎて歌の重要性があまり伝わってこないのです。
人魚に噛まれると人魚化してしまう設定も必要だったかよくわからないし、散りばめられた伏線もいまいちピンとこない。何もかもが中途半端でした。

映像自体は素敵なのですが、どこかで観たようなアニメの寄せ集め感と詰めの甘いストーリーだったのでこの評価にさせていただきます。
しば

しば