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心に吹く風のKUBOのレビュー・感想・評価

心に吹く風(2017年製作の映画)
3.0
6月4本目の試写会は、「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督作品「心に吹く風」。監督中心主義として、橋口亮輔監督「恋人たち」、沖田修一監督「滝を見にいく」などを生み出してきた松竹ブロードキャストの第4弾だ。

たまたま仕事で来た富良野で、初恋の女性と23年ぶりに再会したリョウスケ。初恋の人、春香は夫も子供もいる人妻だったが、夫の出張中にふたりは心を通わせていく…

終盤まで、爽やかでプラトニックな「昼顔 前夜」? って感じで見てたんだけど、最後の最後で「ドカン!」とやられた。あれはズルいだろ〜というラスト。あんな風に終わったら、あの女性の決断は、どっちにしても彼女の胸に十字架となって重くのしかかるではないか。彼女はどうすればよかったのか? 試写会場ではハンカチで目頭をおさえる方も多く見られました。

ただ注文がないわけじゃない。主演の2人、リョウスケ役の鍋島秀和は、特撮ファン的には「大魔神カノン」以来の主役なのかな? 髪型もスカーフもヨン様の代わりみたいだけど、演技力もあるし悪くない。だが春香役の真田麻垂美がひどい。セリフはほぼ棒読みだし、申し訳ないがヒロインとしての魅力に乏しい。

日本映画は「一部売れっ子俳優の持ち回りで成り立っている」という批判が昨今聞かれるが、そういう意味では本作のように普段脇役の俳優さんに光を当ててあげるのは意味のあることだと思う。ただストーリーが直球であればあるほど、演じる俳優の個性や魅力に負うところが大きくなるのは当然のことで、そういう意味では、ヒロインさえもう少し魅力的だったらなぁと思わざるをえない。

富良野の大自然を写した映像はたいへん美しい。また、ほとんど固定で、真正面から捉えたカメラも印象的。パンもズームもほとんどない。と思ったら、最後の最後に心が揺れるところで満を持して使われるところもおもしろい。

この時期だから、どうしても「昼顔」と比べちゃうけど、こちらは「切なく悲しいけど美しい」物語。あちらとは、違った意味で重〜いラストも衝撃的です。
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