BOB

羅生門のBOBのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.8
初めて観た黒澤作品。3年半ぶりに鑑賞。

黒澤明の名を世界に轟かせた名作。後の映画界に与えた影響は数しれず。"羅生門効果/ Rashomon Effect"といえば、映画好きの中では万国共通。

黒澤映画は後のエンタメ性の高い作品達の方が好みではある。ただ、モノクロ映画初心者だったこともあり、面白さより難解さが上回った初見時と比べると、確実に楽しめたし、理解も深まった。

全ての登場人物が"信用できない語り手"である。真実と嘘。人間の醜さ、自分可愛さから来る自分勝手さ。意気地なしの男たちとしたたかな女。疑心暗鬼に次ぐ疑心暗鬼の中で、人間の良心の存在をどれだけ信じられるか。

ラストも、観客の解釈に委ねられる開かれた幕引き。赤ん坊を連れ去っていく杣売りの話をどれだけ信じられるか。羅生門に集った旅法師、下人、杣売りは、実は"The Good, The Bad, The Ugly"だったのではないか?とも思えてくる。

モノクロ映像が美しい。フレーミング、構図がバシバシ決まっている。カット割りや間の使い方、静と動の対比も興味深い。

名優たちの演技に惹き込まれる。野性味溢れる三船敏郎。泣きの京マチ子。下衆な森雅之。狼狽える志村喬。

滝のような豪雨に打たれる、廃れた羅生門の佇まいに凄みがある。

202('24)
ーーーーーーーーーー

世界のKUROSAWA監督作品、初鑑賞。
原作は芥川龍之介の「藪の中」(+「羅生門」)。

「わかんねえ。さっぱり分かんねえ。何がなんだかわかんねえ。こんな不思議な話、聞いたこともねえ。」

視聴者自身が役人になって、四者四様の証言から事件の真実を探っていく構成。人間の本質、複雑さが描かれている。

さすがに映像と音声には時代を感じるが、その分脚本・演出・役者の演技の素晴らしさが際立つ。三船敏郎のカリスマ性、京マチ子の妖艶さが印象的。

「てめえ勝手じゃなきゃ、生きていけねえ世の中だ」

「人間ってやつは、自分に都合のいい悪いことを忘れてやがる。都合のいい嘘を本当だと思ってやがる。そのほうが楽だからな。」

「人という人を信じられなくなったら、この世は地獄だ。」

「人間は弱いからそうなのだ。弱いからこそ嘘もつく。己さえ偽る。」

49('21)
BOB

BOB