こーた

羅生門のこーたのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.2
人間の醜悪さを鋭く恐ろしく描いた名作。
登場人物はみな嘘をつく。それは保身のため、プライドのため、家族を守るため、つまるところは自分のため。死人ですらプライドを守るのはもはや喜劇。
豹変する女の高笑いは鳥肌ものだし、最後の決闘シーンはもう腰が抜けちゃって惨めでぼろぼろなんだけど、生きることへの執着・鬼気迫る迫力がすごくて見入ってしまう。現代で描いたらただのミステリー作品になりそうだけど、そうはさせないテーマ設定がお見事。昔ながらの噂の様に、分からない、分からないと言いながら人間の本質に迫る。登場人物それぞれが言っていることは正しくて正義であって、でも結局エゴでしかなくて、人間って所詮そういうものなんだよ。ってなる。視聴者自身も疑いはじめて、赤ん坊を抱いて立ち去る木こりですら100%信じられない。下人の高笑いが妙に耳に残る。
いやあ素晴らしい脚本・演出でした。
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