たゆた

羅生門のたゆたのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
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面白かった。物凄く上手い作品。
人間の愚かさ、醜さ、弱さが余すことなく描かれてる。
ある男が死んだ話が3人の視点、そして最後には4人目の視点から描く。それぞれ言ってることが全く異なっているけれど、それぞれに共通するのは「全員が自分のために、自分の誇りのために嘘をついている」ということ。人間は弱いから嘘をつくのだというお坊さんのセリフ通り、最後の視点ではそれぞれの弱さが明らかになっている。でも、その視点でさえ、嘘が混じってる。人間がそれぞれ手前勝手に生きている世界は作中も現実もさほど変わらない気がした。人を信じられない世界なんて地獄だと語っていた坊さんが、最後人を信じられなくなっていたのは正に皮肉だった。

演技がとにかく凄い。見てる側をゾッとさせるような笑い方、突然切り替わる顔の表情など、とにかく恐ろしかった。

原作をあんまり覚えていないけど、原作と全く異なる話ではある。だけど、原作のメッセージは踏襲してるんだろうと思う。もう一度原作を読みたいと思う。
たゆた

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