エニグマ

羅生門のエニグマのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.2
土砂降りの中羅生門の下で雨宿りをする杣(そま)売りと和尚と下人。杣売りは自分が見聞きしたある男の殺人事件を話始める。しかし、その妻、彼らを襲った盗人、巫女に降霊した本人、3人の証言は食い違うのであった。
現代で言うところの法廷モノみたいな構成の作品。一つの事象を多数の視点から描写する演出は最近でも是枝監督の「怪物」などで用いられていたが、視点によっては物事の捉え方がガラッと変わるので面白い。これを「Rashomon effect」と言うらしく、フィクションのストーリーテリングのみならず社会学用語として使われてるのがこの映画の世界への影響力を表している。
先述した3人は皆主観的で利己的な言い分で話を盛っていたが、最後杣売りによる客観的な証言によって意外と皆情けない展開だったことが明かされる。そしてその証言もまた一部嘘が混じっており、結局人間は皆嘘つきで「手前勝手でねえやつは生きていかれる世の中じゃねえや」というセリフが飛び出す。しかし、最後は和尚が杣売りを信用し、羅生門に捨てられていた赤子を託して希望のある終わり方をするという「信じることの大切さ」を説いた作品であった。現代でも人は当たり前のように嘘をつくが、だからと言って誰もを疑っていては生きていけない。そんな世界でもまず人間を信じることが良好な人間関係を築く上で大事なのだと考えさせられる。
演技面で言うと三船敏郎の快活な演技は見てて気持ちがいい。「ガハハハハ」という漫画みたいな笑い方が癖になる。妻役の京マチ子の鬼気迫る演技も見応えがあった。
黒澤映画は七人の侍に続いて2作目であったが、こっちの方が時間も短くNetflix版でリマスターされたやつ(?)なのかセリフもはっきりと聞き取れた。
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