安堵霊タラコフスキー

羅生門の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.9
9月6日は黒澤明の命日ということで、言わずと知れた名作だが代表作のこれの感想を書いておこう

羅生門というより藪の中の比率の方が大きく、そのため初めて見た高校時代未見だった藪の中を読むきっかけとなった作品

その原作の藪の中で芥川は真相について言及しておらず、これだけだと三人の当事者の見解が全く違う不思議な小説としか読めなかったろうけど、そこから独自の解釈で真相と思しきシーンをあれだけ人間の愚かさを際立たせた無様なものと描いてみせたことには、再見したとき改めて脱帽した

全体的に説明臭い台詞が多いのは玉に瑕だけど、それでも黒澤の演出力や宮川一夫の撮影センス、演者の熱演が滅茶苦茶光る作品となっているから何度見ても感嘆して堪らない一品となっており、ヴェネチアやアカデミー賞を受賞したのも納得する他ない

黒澤の名作は長めのものが多いから見るとき気を引き締めないといけない場合が多々あるけど、これは90分程度と短めだから見易いのも地味に助かる