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羅生門のtomひでのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.0
「羅生門」公開70周年記念として国立映画アーカイブにて2020年12月6日まで羅生門展が開催中。羅生門展を見に行った流れで久しぶりに「羅生門」を観てみた。NHKBS4Kで放送された4Kリマスタリングで鑑賞。4Kリマスタリングで映像はとても綺麗になっていた。

羅生門を観るのは今回で3回目。初めて観たのは公開から37年後の1987年だった。ヴェネツィア金獅子賞を獲った黒澤明作品という事で初見時はめちゃくちゃ期待して観た記憶がある。ただなぜこの映画が世界的に評価されているのかがあまり分からなかったのも当時の記憶。(今もたいして分かっていないが…(笑))

羅生門展ではVTRで映画監督ロバートアルトマンが「羅生門」という映画がいかに素晴らしいかを語っていた。ロバートアルトマンは黒澤作品の中で「蜘蛛巣城」と並ぶ傑作で、会話が少なく映像で全てを語っている作品。また、その提示される映像全てが真実ではないという見せ方の新しさ、それぞれの映像がとても詩的で観る者の視覚に刺激を与える作品だと語っていた。そしてやはり太陽に直接カメラを向けた映像に刺激を受け、すぐに同じようなカットを撮った事も話していた(笑)

やはり当時、この「羅生門」という映画が世界の映画人に与えた刺激はとても大きかったのだと思う。例えばベルトルッチのデビュー作「殺し」という映画も今見ると「羅生門」にめちゃくちゃ影響を受けている事がよく分かる。「羅生門」公開後はこんな映画がとても多かったのだと思う。

地面に打ち付ける豪快な雨、林の中のギラギラした太陽、巫女に纏わり付く風、カメラマン宮川一夫が見せる映像詩を久しぶりに堪能。ただ個人的には黒澤作品は「生きる」「天国と地獄」の方が遥かに好きなんだよな〜(笑)

「人間っていうやつは自分に都合の悪い事は忘れちまう、都合の良い嘘を本当だと思っちゃうんだ…その方が楽だからな」
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