ダイヤモンド

静かなる情熱 エミリ・ディキンスンのダイヤモンドのレビュー・感想・評価

3.0
キリスト教徒でいる方が安全だろうし
反抗は見苦しいと思う
でも私の魂は私のものよ_。

現在、最も著名で偉大な詩人のひとりエミリ・ディキンソンは、19世紀のアメリカにおいて、厳格で潔癖さを求める宗教的社会に生きた。しかし彼女は、形骸と化したキリスト教と距離を置いた。ただそれは無宗教であるとはいうことではない。彼女は誰よりも神に寄り添っていた。
そのような社会はまた、奴隷問題や男女差といったものに保守的な社会であった。しかしエミリはそのような事柄に対しても、偏見を持ち合わせず、先進的であったといえる。

こうしてみるとエミリ・ディキンスンは快活な女性に思われがちであったが、一方で自身については控えめで、時に卑屈ですらあった。ひとり静かに詩を書くということを楽しみにしていた、いやそれが唯一の生きる意味ですらあったのだ。

詩は日課なのよ
救いようのない者への神の唯一の救い_。

一見気弱で臆病ですらあったエミリを支えていたものは、家族。

家族といたい
完璧ではないし 楽園でもないけど
これ以上の場所は知り得ない
望みもない_。

エミリの世界はとても狭い。マサチューセッツ州のアマーストという小さな町、しかも自宅(といっても広大な敷地を持つお屋敷)が主な活動の場。彼女はその限られた場所の中でのみ生き、家族の中で息をしていた。それでも彼女はそれで十分幸福であった。
しかし親友スーザンは結婚して遠くに行き、父が死に、母も死んだ。孤立感を深めた彼女を支えたのが妹のヴィニー。

傷ついたり怒ると言葉で攻撃する
世間に対して怒りで身を守っている_。

舌鋒をふるって他人を責めるエミリの言葉は確かに正しい。しかしその容赦情けのない言葉には、不寛容がもたらす悪意しか感じられない。それを妹は見抜いていた。

エミリ・ディキンスン好きにとっては待望の映画。そして詩そのものよりも、詩人としての彼女の人生を俯瞰した感が強い。
これを機に、今一度エミリの詩集を読んでみたい気持ちが湧き起こりました。