荒野の狼

静かなる情熱 エミリ・ディキンスンの荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.0
「宗教はアヘンだ」(マルクス)、というのも、逆に「信じなければ地獄に落ちる」(キリスト教原理主義)、と言うのも、ともにそういう環境で育つとねじくれた事になってしまう。はみ出そうが留まろうが、正しき指導者を持たなければ、女は何歳になっても同じだろう(まあ男も別の意味で子供だが)。だから見ていて、こういうのが一番痛々しい。はみ出て結局路頭に迷ってしまうからだ。しっかりと手を引いてやる男(でなくてもいい)がいればよかっただけなのに。女に詩人はいない、ただ詩的雰囲気に敏感なだけ。詩と共に西洋人にとっては最も親しまれている「神」だが、また最も憎まれているのも「神」だと三島由紀夫が書いていた。要するに全く当てが外れているのである。そこじゃない。
「神を信じますか」と、問う人に私ならこう答える。「あなたが思っているような神はいない」と。
ともあれ、ストレートで誤解のないように上手にまとまった普通にいい作品であるが、やはり男には受けなさそう。だが、女性には心をクリアにして、あなどらず見てもらいたい。主人公エミリ以外の人物たちが語る言葉が、この作品のキモである。白を纏(まと)うが、実は彼女は黒子なのだ。
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