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沈黙/ある沈黙のmのレビュー・感想・評価

沈黙/ある沈黙(2016年製作の映画)
2.8
女性の描き方が率直で好感が持てたし、安易な女性性への帰結に至らないところも良かった。(女性vs男性のような構図)
シーン選びがすんなり入ってくるし、音響もシンプルに良くて持続して見られる。

ただ、マリアンヌの気付き(変化)の重要な2シーン、赤ん坊を抱いている友人を窓越しに見るシーンと自分の赤ん坊を抱くシーンの描き方に違和感。

赤ん坊を抱いている友人の母性の表情をマリアンヌが捉えたということが一番重要であって看護師が来て息切れしながら隠れるというのは二の次のはず。友人の表情のアップショットがせめて欲しかった。そうすれば次のシーンのマリアンヌの提案にはもう少し前のめりに感じられたかもしれない。

それと、赤ん坊を抱いてから返してと連呼されても応じないというのは、母性の萌芽というより寧ろ子供返りしている印象が強く、友人が戻ってくる前にマリアンヌは走り出すべきだったように思う。そのあと、戻ってきた友人が誰も居ない部屋をとらえる。そして象徴的な白い廊下の向こう側から走ってくるマリアンヌ、部屋に急いで寄り最小限の荷物を手に取る、門まで走る、赤子へ向ける笑顔、上に顔を向けて門(障害)への涙。それをやってきた友人が遠巻きに見るしかない、ただ黙って見ている。あとから来た看護師に取り上げられるのを遠巻きに見ているしかない友人。
例えばこうした一連のシーンだったならば、マリアンヌの切実さと周囲のやり切れなさがより観客の身に入って伝わるかもしれない。
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