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日本と再生 光と風のギガワット作戦のodyssのレビュー・感想・評価

3.5
【自然エネルギーによる発電をテーマにしたドキュメンタリー】

風力や太陽光など自然エネルギーをもとにした発電について、各国に取材してその現状を報告し、いまだに原子力に頼ろうとしている日本の電力行政を批判しているドキュメンタリー。

ドイツの自然エネルギー発電について、日本でも一般に流布している説が誤りだと指摘しているところが貴重。

つまり、ドイツは自然エネルギー発電の推進を謳っているが実際には原子力発電をメインにしているフランスから電気を買っているという説と、風力発電は不安定で頼りにならないという説であるが、本作品を見ると、ドイツはむしろ電力の輸出国であること、風力発電はたしかに単体で見れば不安定だが、広い地域にいくつも設置されている風力発電設備を集めれば全体としては決して不安定ではないことが分かる。

もっとも、本作品は反原発のプロパガンダ映画でもあるので、ドイツの問題は自然エネルギーで得た電気を全国に送電するシステムの構築が不十分であること、そして一般向けの電気料金が安くない(産業向けは安い)ことである点には触れていない。

外国の例だけでなく、日本でも原発事故のあった福島県を初め、各地で自然エネルギーによる発電が行われるようになっていること、特に日本では地熱発電のポテンシャルが高いので今後の開発が望まれること、などが紹介されている。

日本の原発事故は、単に東京電力を責めれば済むことではなく、日本の電力行政と原子力学界の敗北だったと私は思う。

日本としても安全性の高い発電システムを開発していく方向性をとることになるのは必至である。
その意味で、本作品には一見の価値があると言える。
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