菩薩

彼女のいた日々の菩薩のレビュー・感想・評価

彼女のいた日々(2017年製作の映画)
3.7
平凡な人々の特に何も起こらない日々についての映画。ライカートの『リバー・オブ・グラス』なんかもうそうであると言えるのだろうが、こっちはもっと平凡だしあれ以上に何も起こらない。脅威の精神疾患大集合ムービー『プーと大人になった僕』の脚本家らしく、本作でも皆が何かしかの不満や不安を抱え、それをわんこそばの様に吐き出し続け、他人をカウンセリングする立場のクロエ・セヴィニーなど自分の事で手一杯で患者に逆に心配される程だが、だからと言って誰かが大量の睡眠薬を飲んでみたり、少し高い所からボーッと地面を見つめてみたり、自傷行為に走って流れ落ちる鮮血を見てほくそ笑んだりするわけでもない。姉妹が二組、妹は共に結婚をし、その夫は仕事場も近く(片方に関しては職場すら同じ)、要するにほぼ24時間近接戦闘をし続けている様な状態であるが、一応は手にしたその幸福を失うかもしれない不安に苛まれている。一方の姉二人は所謂キャリアウーマンで、一見すれば自由を謳歌し生き生きとした毎日を送っている様に思えるが、とは言えやはり孤独感を抱えているし、思い通りの人生では無いと嘆いている。その二組の夫婦の間に突如挿入される「異物」としてのもう一人の彼女、彼女は人から見れば「若さ」と「希望」に満ち溢れているのかもしれないが、彼女自身はその地で一人孤独を温め、ほぼ軟禁状態の職場では背中に感じる熱視線を無視し続けている。これだけ爆弾が集えばいつ爆発してしたとておかしくは無いが…繰り返しで申し訳ないが本当に何も起こらない。となればなんの映画なのだ…?と首を傾げてしまうが、これはもう何というか…人生?ってやつなんじゃないですか。「私の芝生は枯れている、しかも塩を撒かれている。」→めちゃくちゃ分かる、その絶望感が君達に分かるかね。満ち足りない毎日をダラダラと生きるしか無い人々の日々の記録としてはこれ以上無いのだろうけど、ただ本当に何も起こらないので…退屈っちゃー退屈な作品だが、この退屈が理解できてしまう人に取っては「傑作」になり得るのかもしれない。意味のない人生についての映画、私も愚痴りながら毎日をやり過ごしています(独り言だけど…)。
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