きぬきぬ

ウーナ 13歳の欲動のきぬきぬのネタバレレビュー・内容・結末

ウーナ 13歳の欲動(2016年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

日本でも何度か上演されている2007年ローレンス・オリビエ賞最優秀作品賞受賞戯曲デビッド・ハロワーの「ブラックバード」を原作者自らが脚色し、「ウーナ」のタイトルにしたように、ウーナのふさがらない深い心の傷をずっと見せられる感じで、15年前に罪に問われて終わった中年男と13歳のウーナの恋愛が何であったのかを問うような視点なのだ。

恋愛と性、大人びていても未成熟な成長過程にある子どもと、中年ぐらいの大人との意識の違いもあって、或る種のラブストーリーとして描かれているから、非情に難しく考えさせられる。
思春期の少女でも女であり、女として男を愛したのだろうから。それでも、
父親程の年齢の男と愛らしい少女ウーナとの恋愛の記憶は淡く美しく回想されるけれど、ゲームめいた秘密の逢瀬には背徳の歓びのような不穏さもあり、成長したウーナの精神の壊れっぷりは、その恋愛が悲劇的に終わり、しかも性的虐待ではなかったかという意識を家族や周囲、社会から抱かされ、自身もその愛を疑い、性的虐待の被害者として成長した為、服役したとはいえ名前を変え人生をやり直してる男よりも、傷が大きい。
過去に囚われたままのウーナには、仕事で役職に就き家庭まである男から、あれは愛だったと言われても何の慰めにもならないように思う。愛の残像が浮かぶものの再会に動揺する男には警戒心と欺瞞、子どもだったウーナへの責任転嫁の自己防衛が見えるし、毅然として見えるウーナは愛憎の間で揺れる砕けそうな脆さが窺え、その対峙にはスリリングな緊張感が伴う。
ウーナが男に求めていたのは、15年前の愛が真実の愛だったのか、その答えが得られたとしても過去は取り戻せない。
結果、ウーナの傷口を拡げるばかりで、彼女は男に会って、いったい何を求めていたのか、戯曲と同じで、まだ投げかけられたままなようにも思えてしまった。それと、舞台演出だともっとショッキングであるはずの場面が和らげられてる感じもするな。

痛々しいウーナのルーニ・マーラも良いのだけど、少女時代のルビー・ストークスがとても良い。そしてベン・メンデルソーンは相変わらず胡散臭くて良い。


2016年のトニー賞で、ストレートプレイ部門のリバイバル作品賞、主演男優賞(ジェフ・ダニエルズ)、主演女優賞(ミシェル・ウィリアムズ)がノミネートされたときの舞台「ブラックバード」を、「性的虐待の被害者と加害者の対決を描いた凄惨なドラマ。大胆にも性的虐待関係をある種のラブストーリーとして描き、虐待が子どもの内面に及ぼす破壊力の凄まじさに迫った作品」と書いていた評があって、これがとてもしっくり理解出来る。
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