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グッバイエレジーのtakのレビュー・感想・評価

グッバイエレジー(2017年製作の映画)
3.0
故郷と疎遠になっていた映画監督が、友人の訃報を聞いて北九州に戻ってくる。亡くなった友人がその後どう過ごしていたのかを聞き、彼の考えや行動に想いを馳せる。残された友人の妻と息子、仲間たちとの心の触れ合い。年老いた父を励ましながら、街の小さな映画館を切り盛りする幼なじみとの再会。故郷でつながる人と人。亡き友がつないでくれた人間関係。

「ライフ・オン・ザ・ロングボード」で人生の転機に向き合う男を演じた大杉漣が、この映画でも友人の姿を通じて自分の人生を見つめ直す様子が心に染みる。それは多分、この映画を観ている自分自身も年齢を重ねてきているからだろう。若い頃にこの映画を観ていたら、初老男のおセンチな映画だと言い放っていたかもしれない。映画は観る年齢や人それぞれで感じ方が違って当然。吉田栄作演ずる友人の半生は、自分を重ねる程の共通点はないけれど、彼のまっすぐな生き方はいろんなことに日々翻弄されてる観客目線だと、ちょっとカッコよくも見える。

監督の出身地である北九州市ロケ作品。実在の映画館や団体もそのまんま出てきて、小倉や門司港の街並みが映される飾らない現実感がいい。気丈に地上げ屋に立ち向かう映画館主を演じた藤吉久美子、友人の妻を演じた石野真子も違和感なくこの土地の空気に溶け込んでいる役づくり。

「彼の半生を映画にします。彼とまた映画で会いましょう」と宣言する主人公に、遺族の気持ちとか企画通るかとか大丈夫なの…?と最後に冷静な気持ちにさせられた。多少の物足りなさもあるが、全体的には悪くない。「小倉の男やから」「門司の男やもん」とディープな地元愛が込められている。
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