しんご

バトル・オブ・ザ・セクシーズのしんごのレビュー・感想・評価

3.5
同じプロでありながら賞金額が男子の1/8という1970年代のアメリカ女子テニス界。その状況打破の象徴的イベントとして女子現役トップのビリージーン・キングと往年の名男子プレーヤーであるボビー・リッグスが対決した実話を基にした作品。

対決当事者の2人がゴリゴリの女性至上ないし男性至上主義者でない所が本作に1つの奥深さを与えている。奥さんのコネで会社のポストを得ているボビーはいわば女性にプライドを傷付けられている側面があるけれど、内実は妻子を愛する人間味のある人物だ。「男性が優位」だと煽る今回の主催者サイドの主張(男性側)は、彼にとっては自分の存在を確認するための建前に過ぎず、興行を盛り上げるためにあらゆるパフォーマンスをするボビーはどことなく憎めない。

対するビリージーンも女性代表として同性から尊敬の眼差しを注がれるが、彼女自身の中に自覚することを避けていたマイノリティの部分が今回の一戦を機に更に浮き彫りとなることで苦悩する。お互いグラついて安定しないアイデンティティを持つ者同士が行う「性差間対戦」が本作の見所であり、一律にウーマンリブを称賛する作品と一線を画す面白さがある。

とはいえ、実際の対戦記録は史実の通りなので、その点に関してドラマチックに仕上げられず盛り上がりに欠けたのは否めない。そこに至る当事者の心情の機微を見せるのがメインなのでそこは仕方ないけれども。
しんご

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