このレビューはネタバレを含みます
ラストシーンのみに言及。
クライマックス、映画がそれまで直接描かなかった原爆投下直後の現状が映し出される。
骸骨、瓦礫から飛び出て痙攣する子供の腕、皮が捲れ爛れた人々が彷徨う地獄絵図がそのまま目に飛び込んでくる。
そこでまるでミュージカルのような「父を返せ、母を返せ」の歌が覆いかぶさる。
音楽の高揚が最高潮に達する瞬間、オレンジ色のキノコ雲が誕生するカットに切り替わる。
木下が持つ美意識(特に複雑な意味ではなく、綺麗に、美しく という意)が原爆という題材を扱った作品のこのラストシーンで妖しく、もっと言えば不道徳に働いてしまっていると感じる。
つまりはあのラストカットでどこかキノコ雲の美しさがフィルムに意図せず焼き込まれてしまっているような感覚を覚えるのだ。