菜南子

この子を残しての菜南子のレビュー・感想・評価

この子を残して(1983年製作の映画)
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原爆投下という日本人にはシリアスな題で、でもその本質に見えるものは映さない。原爆で吹っ飛んだり、ガラスが刺さった人だったり、残忍と知りながらも観るとどこか快楽を感じでしまうような原爆の断片はどこにも見当たらない。そういう快楽が戦争の本質を逆に捻じ曲げて映画に映してしまうことを嫌ってだろうか。

そのゾクゾク感がない代わりに、ソファーにだらっと座って観てしまう感じ。映画にリアリティが希薄。ストーリーはホームドラマみたいにテンポよく進むだけに絵空事感が増していく。

でも嫁が死んで、母が死んで、娘が死んで、希薄だから、見えないからそういう事実が変わるわけではない、希薄だから見つめる必要がないわけではない、悲しみが減るわけではない。
悲しみは写真には映らない、まさにそう。
そういうことを突きつけられるエンディング。
菜南子

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