ぽん

テオレマのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

テオレマ(1968年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

アマゾンを散策してたら出くわしてしまったパゾリーニの作品。いやー、ヘンなの観ちゃったなぁー。

ブルジョワ一家のお屋敷に数日滞在した美しい若者が、不思議な魅力で家族全員を虜(とりこ)にして、風のように去って行く。すると金持ち一家全員の精神が崩壊、平穏だった家族の姿が変わり果ててしまう・・・ってなストーリー。

パゾリーニは共産主義のカトリックと聞いていますが、たぶん敬虔なクリスチャンって訳ではないんでしょうね。想像するに解放の神学あたりにシンパシーを寄せて、イエス・キリストを解放者と捉えるようなプログレッシブな思想を持ってそうな気がする。
 
この物語に登場する美しい若者=テレンス・スタンプは、解放者ってことじゃないのかな。繰り返される生活様式、疑ったこともない常識、社会通念などなど、固定観念にがんじがらめになってたブルジョワ一家の人々を、古い世界から解放した現代のキリスト、みたいに描いたのかなーと。女性陣に対しては性的にも解放しちゃってそれはどーなの?って思うけどね。でも画的にはエロくなくて女体に興味ないのがバレバレ。

あと、メイドさんも解放されちゃう一人なのですが、彼女は労働者階級なので金持ち一家とは違う運命を辿る。イエスとの出会いで自らも癒しなどの奇跡を行えるようになった使徒たちのように、彼女も奇跡を起こす。聖人になったってことですかね。

ブルジョワのオジは最後は荒野をさまようことになりますが、自分の会社を労働者に差し出そうかと葛藤しながら荒野に入っている。この人も聖化されたんだろうな。四十日四十夜、荒れ野で悪魔の誘惑と戦ったイエスになぞらえて、このオジは誘惑をふりきって労働者の救い主になると。これで冒頭のシーンにつながる。

うーん、なんだかパゾリーニの妄想に付き合わされちゃったって感じー。とほほ。(芸術を解さない朴念仁でまことにすいまめーん)
ぽん

ぽん