けーな

劇場版 嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~/ヘンリー六世 PART2のけーなのレビュー・感想・評価

4.1
このホロウ・クラウンシリーズ、前作と今作が、ドロドロだけど、面白い。裏切ったり寝返ったりしながらの、こんな血みどろの王位継承権争いが、実際にあったことだと思うと、とても恐ろしいけれど。

戦いで、人を殺し合うことが、恐ろしいことだと、改めて感じた。戦争の中にいると、人を殺すことに、何のためらいも感じなくなるんだろうな。首が吊るされてる前で、みんなで喋ってるとか、あり得ないし。感覚が麻痺してくるのだろうな。何より、復讐が、復讐を生んでしまっている。負のスパイラルだ。

その点、ヘンリー6世は、弱いけれど、いいこと、いっぱい言ってたな。
 『悪しき手段で得れば、悪しき結果しか生まれぬ。私は、息子に善行を残したい』
など。

ヘンリー6世は、実際には、かなり精神を壊した人だったらしいけど、映画の中では、悟りを開いた人のような発言してた。トム・スターリッジ、見事な演技だったと思う。しかし、腰布だけで、野原を彷徨うシーン、撮影も、寒かっただろうなって思う。胸毛が濃くて、お腹まで、まっすぐ続いているのには、びっくりしたけど。

戦いの途中で登場する"嘆く父親"と"嘆く息子"が、いかにもシェイクスピアらしかった。戦いで、誤って、自分の息子を殺してしまった父親と、誤って、自分の父親を殺してしまった息子が嘆くシーンである。戦争の悲惨さ、愚かさ、虚しさを表現しているのだろう。

そして、やっぱり、凄かったのは、グロスター公リチャードを演じているベネディクト・カンバーバッチ。残忍非道と言われる、後のリチャード3世だ。リチャードをカメラ目線で、映し出すところが秀逸だった。

いよいよ次作が、最終話。リチャード3世がどのように誕生し、どのような王となるのか、楽しみだ。怖いけど。
けーな

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