デルタ

劇場版 嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~/リチャード三世のデルタのレビュー・感想・評価

4.0
記録。

エドワード四世とヨーク家の統治下でようやく平和になったかに見えたイングランド。しかし、国王の弟グロスター公リチャードが、王位を自分のものにする計画を開始。新たな脅威が国王の身内から現れる…

シリーズの王の中で、最も邪悪で孤独な王。
誰もリチャードを愛さない。
彼と出会う誰もが、面と向かって公然と彼の体を嘲笑し、怒り、憎しみ、恨み、呪いの言葉を投げ掛け、母親でさえも、自分の子宮を恨むと言う。

リチャードは「悪役を証明する」ことを決意する。

リチャードがカメラに向かってまっすぐに独り言を言い、終始うなずいたりウインクしたりするというアプローチを取ると、観客である我々は彼の悪行に加担しているように感じさせる。
周囲の誰もがリチャードを侮蔑し、「絶望して死ね」と言えば言うほど
我々観客はリチャードに魅了され、応援せずにはいられなくなる。

しかし一方で、リチャード本人は、自分が追悼されない殺人者であることを自覚している。
薔薇戦争最終決戦であるボズワースの戦い前夜、悪夢にうなされたリチャードは
「誰も私を悲しむ者はいない
当然だ
自分でも悲しくないからだ
自分の中に憐れむ心などないのだ」と口にする。
生涯にわたって拒絶され続けた末の、自己嫌悪や自己否定を抱きながら最後まで悪役に徹する。

戦死した最後のイングランド王リチャード三世。
数多いベネの役柄と演技の中でも、最高傑作。
デルタ

デルタ