笹井ヨシキ

ミックス。の笹井ヨシキのネタバレレビュー・内容・結末

ミックス。(2017年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

全然見る予定はありませんでしたが、観る機会に恵まれたので鑑賞して参りました。

先に言っておくと自分は古沢良太の脚本はあまり好きではありません。

古沢さんの脚本は毎回「実はこうでした」的などんでん返しによる意外性と驚きを狙ったものが多く、それ自体は楽しいと言えなくもないのですが、その実は丁寧に伏線を張ってキレイに回収しカタルシスを生み出す類のもんではなく、「それなら何でも言えるだろ」と思ってしまうほど強引なこじつけや後付けだったりするので全然巧いとは思わないし、そうやって無理矢理展開を捻った後は、大仰な感情描写でやり過ごして、「はい感動的」みたいなドヤ顔をしてくるので、中身も外見も欺瞞に満ちていて嫌いでした。(あくまで個人の意見ですw)

ただ今作は良かった!

役者陣のナチュラルな魅力が伝わってくる内容だったし、古沢脚本の後付けもメインにドンッと持ってきてドヤ顔するようなものではなく、あくまで演出の一貫としてサブキャラを掘り下げて物語に厚みを持たせる程度の役割に抑えられており、初めて効果的に使われていると思えました。

まず主演の二人が良いですね!

特にヒロインのガッキーのテレビドラマ的過剰さに寄ってしまいそうなキャラクターを、抑えた演技でバランスを取った瑛太の功績は大きいと思います。
彼の静かで感情を表にさない演技があるので全体のリアリティが増しているし、ヒロインの多満子のアッパーなキャラ付けと萩原のダウナーなキャラがベストな呼吸を生み出しておりとても良かったです。

正直彼が出てくるまでの多満子の話は「可愛いけどこの調子で2時間はなぁ・・・」と思っていましたが、萩原が出てきたことにより全体に良い具合のリズムが生まれたという感じだったと思います。

卓球を黒歴史にして失恋のトラウマから逃げ出してきた主人公が、もう一度卓球を始めて仲間たちと本気で勝利を目指すことで、それまでの人生を清算していくスポコンものとしても良く出来ており、
特に終盤で古沢脚本の「後付け」によりサブキャラたちのそれまで語られなかった過去が明かされるくだりは、アンチ古沢の自分が完全敗北して「粋じゃん!」と思わされた瞬間でもありましたw

卓球を初めたきっかけはバラバラでもそれぞれに本気で向き合うべき人生があり、諦めかけた人生をワンスアゲインしようともがく姿はそれだけで輝いています。

選手の名前のテロップが出る演出なんかは最初はどうかと思いましたが、各々が卓球に真剣に向き合い人生を清算したとき、初めて卓球選手として認められるという演出にもなっており納得させられました。

この辺は「ロッキー」などの王道展開をややトリッキーながらもしっかり踏襲できており、好感が持てるあたりです。

演出も悪くなく、予告編のガッキーの変顔みたいなのは心配していましたが、練習シーンののモンタージュとしてスマートに処理されていたし、多満子と萩原が水をかけ合うといった描写もベタかもしれないけど多幸感に満ち溢れていて良かったです。
試合のシーンも白球をCGで処理しているらしいのですが、ちゃんと本物っぽく見えていたと思います。

まあここはどうかというところもあって、まず社会人卓球が世の中的に不自然に盛り上がっているのは若干違和感がありました。ワイドショーで選手が取り上げられるとか(申し訳ないけど)早々ないと思うし、永野芽郁ちゃんはチャラチャラしていかにも鈍臭そうな感じなので、女としての嫌な感じはあってもスポーツ選手のライバルとしてはどうかと思いました。
瀬戸康史演じる元カレも終盤にあんな奸計を弄してくるとか、いくら何でもやりすぎではないかと思いました。彼ら二人はもう少しどうにかできたんじゃないかと思います。

あと多満子と萩原の恋愛関係を押し出してくるのも蛇足な気がします。

彼らはあくまで人生の失敗を卓球で挽回することを共に目指すパートナーであり、そこに恋愛が絡んでくるとミックスダブルス自体がそういう要素を孕んだものと誤解してしまうんですよね。
百歩譲っても少し匂わせる程度の淡いものにすべきで、仕事場まで男が押し掛けてきてキスして二人でどっか行くとか、恋愛を行うために他を蔑ろにしてる感じがして微妙に感じてしまいましたね。

とはいえ初めて好感が持てた古沢脚本の映画で充分楽しめました!
嫌いと思っていても高を括らず観てみるのが大事だと再認識した一作です!
笹井ヨシキ

笹井ヨシキ