松井の天井直撃ホームラン

ティーンスピリットの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

ティーンスピリット(2018年製作の映画)
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↓のレビューは、以前のアカウントにて鑑賞直後に投稿したレビューになります。

☆☆☆★★★

【蝶々夫人の娘の物語】

ヴァイオレットは、母親と共にポーランドから移民して来た。父親は居なくなり、彼女は移民である為か、学校ではなるべく目立たない様に振舞っている。
ヴラドは、ロシア内戦を経験した元は名のあるオペラ歌手。しかし今では(亡命したのか?は不明》酒浸りで。一見すると浮浪者にしか見えない。この2人が出会った事から起こる《化学反応》が展開される

映画本編を観たならば、単なる青春映画の1本なのですが。ヒロインのエル・ファニング演じるヴァイオレットと、マネージャー役のヴラドには、オペラ〝蝶々夫人〟の記号が見え隠れしている。
とは言え、人間関係等は全く違うのですが。
(正直な話、オペラにはちょっと疎い💧)

そんな関係性を考えながら観ていたのですが。フッと…映画の中盤辺りから、あるハリウッド映画の存在を思い出した。

【 以下、「何言ってんだコイツ…と。笑われるのを承知の上で、勝手な解釈を展開します。】

映画本編を観ながら思い出したのは、ベット・ミドラー主演の名作『ローズ』でした。

嗚呼!「馬鹿かコイツ!」の大合唱が聞こえてきそうだ(ー ー;)ガクブル
そりやそうですよね〜。『ローズ』は、アメリカが抱えた。ベトナム戦争後の反戦運動真っ盛りの時代を背景に。ロックスターが、一大産業になりつつあったロックビジネスに振り回され。身も心も疲弊し麻薬に溺れ。最後はステージ上で倒れて死ぬ。そんな彼女を最後まで見守ったのは、ツアー中に知り合った脱走兵の彼氏だった…とゆう話。
全くもって本編と『ローズ』との間に、コレと言った接点はない。僅かに、ヴラドが経験したと思われるロシア内戦の事実にだけ。ベトナム戦争当時の匂いが、感じられると言った辺りだろうか。

実際、どうやらヴラドは内戦を経験し、アメリカへ来た事で。ポップミュージック優先の音楽ビジネスに対する屈折した想いを持っている様にも感じる。だからこそなのか?決勝直前に、ヴァイオレットが契約条件を提示された際に、嫌味な言葉と態度を示したのだろう?と感じたのだった。
現在の音楽事情へ憤りを感じるヴラドと、「歌を歌いたいのなら歌唱隊で良い!。神は最高の観客だから!」と言う母親に反発を示すヴァイオレット。最後のステージパフォーマンスで、これまで自らが封印していた自分自身を全て曝け出す。まるで、『ローズ』の時のベット・ミドラーの如く。
(流石にベット・ミドラーと比べてしまうと割りを食って仕舞うのだけども…。)

そんな、恋人でも親子でもなく。歌手を夢見るヴァイオレットと。その自称マネージャー、ヴラドの関係性を観た時に『ローズ』を観た時に感じた感覚を思い出したのかも知れない。
…とは言っても。作品の最後は『ローズ』の様な悲劇的な結末ではなく、寧ろハッピーエンドに他ならない。何故なら当然の如く、製作側には『ローズ』の存在など意識はしていないからで。主人公が苦悩しながらも、それらの壁を乗り越えて成功する。そんな青春映画としての王道を目指して製作されている訳で…強引に『ローズ』を引き合いに出しているのは。あくまでも、私が勝手に意識して〝そう観ていた〟からですけどね。
まあ、いづれにしても。場違いなレビューであるのは間違いないのですが…(´-`)

映画の最後。彼女は不安感から、絶えず身に付けていた〝モノ〟を外す。
何故なら、彼女には《神頼み》をする意味がなくなった。《蛹》は、自らの力で《蝶》となり羽ばたき始めたのだ!

監督はこれが初監督作品なのかも知れない。
歌の場面はMVの様で、それ程の面白さは感じなかったものの。最初のオーディションの場面で、エル・ファニングが感じている不安感を。台詞等を使わずに、映像と劇伴・彼女の表情等で表現する演出は悪くなく。どことなくホラー的な要素を持っていた。そんなところから観ても、いずれは良質なホラー映画を撮る可能性を感じさせてくれる。

最後に、エル・ファニングのファンに。

『マレフィセント2』での彼女の美しさは、神懸かっていたのはご存知の通り。
あの美しさから比べてしまうと。今回の彼女は、少しばかりの暗さを漂わせており、美しさは少々控えめ。その為に、『マレフィセント2』を観た時の様な満足さはないかも知れない。但し、そんな思いを吹き飛ばすくらいに。劇中で数曲歌う彼女の佇まいこそを堪能すべし。
大きな声では言えないが、映画中に彼女は何度かシャツ姿を拝ませてくれている。
その際に胸のラインがはっきりと分かるのだけど…これぞエロカワの極み也〜( ´Д`)
全く脱いでなんかいないのに、美しいって本当に罪な事ですねえ〜。もう眼福!眼福!
良い冥土の土産になりました(//∇//)

2020年1月14日 角川シネマ有楽町