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最高に素晴らしいことのrensaurusのレビュー・感想・評価

最高に素晴らしいこと(2020年製作の映画)
4.2
フィンチは、人の気持ちが痛いほど分かるからこそ、落ち込んだ人の心の奥底まで手を差し伸べられるし、普通に生きていたら忘れてしまいがちな世界の素晴らしさにも気づくこともできるが、その繊細さゆえに、「より自分でいられるように」「目覚められるように」「悩みの原因を解決できるように」などと他人と自分の境界を失ったり、無意識に影響を受けたりして、悩みが妄信的になったり、必要以上に自分を責めたり、どこまでいっても苦しかった。

誰かとの深い繋がりを求めているけど、必要以上に自分を守って弱さも見せられないから、上手く自分を表現できず、偽っているために定期的に閉じてしまい、周りを振り回してしまう。太宰治の言葉に「弱虫は、幸福をさえ恐れるのです。綿で怪我をするのです。」というのがあるが、まさにそんな感じだった。

反対にヴァイオレットは、弱さを見せる勇気を、フィンチのおかげで持つことができていた。

悩みにも、自分にも、友達にも、家族にも、確かなものは何もないんだと、半ば諦めに近い『心の余裕』が生きていくには必要なのかも知れない。それでも、人を信じ、求めることはやめてはならないとも思う。

人は人を救えることもあるし、救えないこともある。ただ、存在してくれるだけでこの上なく幸せに思える人もいるし、そう思ってくれる人もいる。何度落ち込もうと、何度もこの世界の明るいところを信じるところから起き上がれる。
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