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最高に素晴らしいことのmofaのネタバレレビュー・内容・結末

最高に素晴らしいこと(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

原作は、ヤングアダルト小説
「僕が求めた最高に素晴らしいこと」
その実写化という事で、
ちょっと心配な感じはあった。
非常にセンシティブな内容に
なっているので、
たかだか2時間足らずで、その辺りを、
きちんと描けるのか?という不安がね。
でも、主演が
エル・ファニングという事で
観てみたんだけど・・・。

エル・ファニングとジャスティン・スミス。
特に、ジャスティン・スミスは 
好演してました。
精神的な問題を抱えた青年を、
リアル感を持って演じていたと思います。

それだけに・・・・

やはり、物足りない感じがあって、
そういった心情とか、
分かりづらい所があったかなぁ。

そして、結末が結末だけに・・・

「どこが、最高に素晴らしい事やねん!!」
と、文句も言いたくなります。

この喪失の物語を、どう消化すべきなのか、
難しい所です。

心に問題を抱えた2人が恋に落ちる。
姉の死で傷付いたバイオレットを、
癒したのがフィンチだったが。
正直、この過程も非情に強引な気がして、
私は受け入れずらかった。
大好きな姉が交通事故で死んでしまい、
立ち直れていない・・・って
設定なんだけど、私からしたら、
「自転車に乗って、学校に行ってるだけで、
充分じゃないか」と思うんですよね。
なので、車に乗れとか言うフィンチは、
凄く、独りよがりな青年だし、
やってる事は、いちかばちか・・・
って危なっかしいイメージを持った。
(強引にして、バイオレットが更に
トラウマになる可能性もあるわけだし)
 
ただ、それら込みで、
フィンチという所もある。
自分の傷には、向き合えないが、
人の傷には向き合えるのだ。

 姉の死から立ち直ったバイオレット。
そうすると、今度はフィンチが
不安定な状況になっていく。

この時のジャスティンスミスの演技が、
もう、リアルでね。
自分の感情をコントロール出来ず、
どうにも出来ない感じが、
非常に痛々しい。
 けれど、対外的に見せる顔は、強気で陽気で、
大丈夫なんだと。弱音を吐けない・・・
というか、何が弱音なのかも
分からないんだと思う。
 自分を覆っていくネガティブな
感情の出どころも、
感情を抑える術も分からず、
人知れず、パニックに陥っていく。

この過程は、本当に、震えるくらい怖い。
誰かが彼を導き、一つづつ、
紐解くべきだったと思う。
 彼の悲しみや恐怖、混乱を・・・・。
確かに、愛されてはいたけど、
母親は多忙だし、
姉もまた、愛しながらも、
寄り添えなかった。

 心を交わしたバイオレットに対しても、
愛するからこそ、
強気な態度しか取れなかった。
 壁を作ってしまった彼を、
救う手立てはない。

結局、フィンチは、自死を遂げてしまう。

最終的に、バイオレットは、
姉と恋人の死を乗り越える・・・
みたいな、ちょっと晴れやかな
最後になってるんだけど。

っんなワケあるかいな!!!

・・・と私は言いたい。

いや~・・・けっこうな
トラウマやと思うけどね。
韓ドラなら、このトラウマから
どう立ち直るかって作品が
1本出来そうだけど・・・。

なのでね・・・
この作品を観て、一体、
どの世代に何を訴えたいのか・・という
疑問が湧き上がってくるんです。
 ティーンエイジャーに向けてなのかな・・・・。

でも、この作品では、
カウンセリングとか全く
機能してないワケですよ。
それで、
「ああ、気持ちが不安定な時は、
ここに逃げ込めばいいんだな・・」
とかいう、ヒントにもならないワケです。

描かれているのは、
自死と、その後、
それらを乗り越えた人たち・・・

まさかとは思うが、逆の意味で、
「自分が死んでも、みんな割と、、
立ち直るんだ・・・
そして、簡単に忘れられてしまうんだ。
そんなの、寂しい!!」って思えって事なのかな?
(いや、違うだろう)

ならば、大人たちに向けて??
ティーンエイジャーの精神的な問題は、
表に出にくいって事だから、
映画のカウンセラーみたいに、
適当な事すんなよ??っていう事なのかな??

エンドロールで、取ってつけたように、
自殺を考えてる人は、こちらへ・・・・
みたいな表示は出るけど、
正直、この作品は、
自死を推奨しているのか、止めているのか、
わからんのです!!
まぁ、推奨してるって事はないやろうから、
多分、自殺撲滅キャンペーンみたいな
意味合いがあるのかも知れないが。

 ・・・って観た直後は、悶々としていて、
考えをまとめるために、
お風呂の大掃除して、
カビキラーでちょっと酔ったんですけどね。

そしたら、ああ、こういう事なのかな・・・
って思ったんです。
この作品を観て、
私が、こう思ったように、
ティーンエイジャーにも
感じて欲しいって事なのかな・・・って。

フィンチ、なんで死んでしまったんや!!
誰かに相談すればいいのに・・・!
愛してくれる人はいたんだから・・・
残されたバイオレットの気持ちは、
どないなるんや!!

フィンチを見守る人間として、
彼の自死を、悔やむ気持ち。
もっと、ああできただろう・・・
こうできただろう・・・
そういう気持ちを、リアルに感じる事が、
この作品を観る意味なんだと思ったんですね。

脚本に、難は確かにあるけれど、
フィンチを演じたジャスティン・スミスの
リアルな演技があったからこそ、
彼に寄り添い、彼の選択を悔やみ、
腹立だしく思える。 
 結果がどうかではなく、
その気持ちが大切なんだと、
ようやく理解出来た。
 
  
自殺に関しては、
「もうすぐ死にます」を視聴して以来、
よく考える。
 大切な存在がいるんだから、
自殺はダメ・・・のようなテーマに、
正直、納得がいかなかった。

自殺というものは、その瞬間、
どんな事情も、
どんな感情もつなぎ留める事は
出来ないんだと思う。
家族が悲しむ・・・とか、
そういう事を考える余裕はない位、
切羽詰まってしまった結果なんじゃないかな・・・と思う。
本作では、その辺りが非常にリアルだったと思う。
愛する恋人がいて、
自分を心配してくれているけれど、
それ以上に、消えてしまいたくなるのだ。

 生きてさえいれば・・・と思うけど、
その「生」が、もう、
嫌になってしまっているのだから、
それを理由に救う事も難しいと思う。
 自殺は「ダメだ」「悪」だという考え方は、更に、
そういう気持ちを持った人たちを 
追い詰める事になるような気がする。
最後の最後の選択肢が「自殺」であるなら、
その選択肢を否定する事は、私には出来ない。
だからこそ、
そういう究極の状況になる前に、
救いを求める事が出来る事、
助けてくれる存在がある事を知っておくべきだし、
弱音を吐ける・・・そんな弱い部分を、
きちんと残しておくべきなんだと思う。

家族はもちろんだけど、周囲の人たちにも、
そういう気持ちを忘れないでいたい。
 ひょっとしたら、ちょっとした声掛けで、
気持ちを変える事が出来るかも知れない。
 狭まった視野を、 
広げる事が出来るかも知れない。
  
友人に、ランチでもどう??
って誘われたら、
断らないようにしている。
 ひょっとしたら、何か、
心に抱えているのかも知れないし、
何か、行き詰っているのかも知れない。
 ほぼ、それらは杞憂に終わるけれど、
話をする上で、気持ちが晴れたわ~
という事もある。

極端な話、どこかで誰かと
隣り合わせになったとして、
「今日は天気いいですよね」の、
その一言が、
誰かの気持ちの切り替えになる可能性
ってあると私は思ってて。
 暗くて底のない底しか見えない人が、
頭上に広がる空の存在に
気付く事って、そういう何気ない
一言なのかも知れないって、
そう思ってます。
 だから、その逆の作用も勿論あって。

人に向ける言葉のひとつひとつは、
丁寧で慈愛に満ちていたと思うし、
基本、ネガティブではない言葉を
選びたいと思っています。

そして、ティーンエイジャーたちには、
弱音を見せる事は悪い事ではないと言いたい。
壁を作られたり、殻に閉じこもられては、
どうしようもないのだ。
 特に、「男だから・・」という
気持ちも抱きがちかも知れない。
女性を守り、弱音を吐けない・・・
フィンチのような青年は、
意外にいると思う。
 でも、きっと、そうではなくて。
辛い時に、それを表に出せる。
そんな弱さ・・
弱さのようで実はその強さを、
是非、胸に潜めて、生きていって欲しい。

ツラツラ・・・と書いてしまいましたが。
(多分、こんな最後まで読んでいる人は
いないだろうと思い、
書き綴ってしまった)

 生きて欲しい。
生きるという選択を、して欲しい。
 いつも、そう願っています。


mofa

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