海

孤独なふりした世界での海のレビュー・感想・評価

孤独なふりした世界で(2018年製作の映画)
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夕焼けか朝焼けかもう分からなくなった孤独なふりした世界で、瞬き一つが惜しかった。白いTシャツに透けて見えたオレンジ。黄色い髪の毛のあいだからはじまってゆく夜のブルー。古い写真の裏側や花の落とす影から世界は何度でも終わって始まる。こんな想いをするくらいなら、ひとりで居た方がましだった。あなたが居たから見ることのできた景色の方が今のわたしには多いことは分かっていても。思い出すときわたしはいつもひとり。ふたりで居たはずの波打ち際に、風の吹き抜く展望台に、雨が降っていたあの日の駐車場に、わたしはひとりで居る。あなたを待っている。目を閉じたら耳をすまし、耳を塞げば目を凝らしてた。ひとりでも生きていけるだろうと思う、あなたが居なくても平気だろうと思う、でも、たった数時間の過去があるから、そのために明かりを消さないでおこう。
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