あき

イット・カムズ・アット・ナイトのあきのレビュー・感想・評価

3.5
なんの前知識もなくジャケ買いして観てみたら想像以上に凄い映画だった。
設定について詳しい説明は一切なく”行間を読む”しかない。
はっきりしてるのは、ウィルスが蔓延した世界で自主隔離して生活していた家族に起きる出来事を描いていること。
感染からなんとしても身を守るという自らの正当性の裏返しの、冷静さを失った狂気が行き着くところの衝撃。
家から出てはいけない、他人と接するときはマスクと手袋着用、どんなに愛した家族も感染したら死に目に会えず火葬…
まさに今ぼくたちが体験しているこのコロナ禍に陥る前にそれを予言していたかのような映画で、その意味では”コンテイジョン”(米,2011)が話題になったけど、
あれが医療業界の視点からの物語だとすると、この作品はまさにウィルスそのものよりその”情報”に踊らされた”我々”の目線になっている。
物語は終始ずっと重々しく最後まで息苦しさが抜けることはない。90分あまりの短い作品なのにこれ以上長かったら精神的肉体的に持たないと心から思ったほど、重い。そしてその重々しさを通り越したラストの虚無感。
もしこの映画を映画館で観てたら、あまりの精神的疲労感と脱力感でエンドロールが終わってもしばらく立ち上がれないんじゃないのかと思うほど、久しぶりに抜け出せなくなるほどの凄いスリラー映画を観た。
あき

あき