紅蓮亭血飛沫

アフターマスの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

アフターマス(2016年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

アーノルド・シュワルツェネッガー主演作である事、実話を元にした作品である事、また、先日アンビリバボーで紹介されていた事から以前より興味のあった作品です。

近年、シュワちゃんが演じる役には比較的シリアスな役柄が増えている傾向がありますが、本作でも同様にとてもシビアな環境に追い込まれる主人公を演じています。
家族を飛行機事故で失った主人公・ローマン。
色々な不幸が重なったとはいえ、飛行機事故を招いてしまった管制官・ジェイク。
被害者であるローマン、加害者であるジェイクに焦点が当たり第三者である視聴者はどちらにも感情移入してしまう、どちらにも同情してしまう味わい深さを堪能出来ます。

そもそも今回の事件、事実に則れば元々ジェイク一人に管制塔のあれこれを任せていた人員面の問題や、航空会社に伝わる悪しき風潮といった人為的な背景が事故の原因として挙げられますが、本作ではそれらの要素をほぼ描いておらず、ローマンとジェイクに降りかかった事件を境に描かれる日常がメインとなっています。
そのため、先日アンビリバボーにて鑑賞した際の事件の詳細・原因といった具体的な部分はほぼノータッチである事から、メインとなる人物二人でなくこの事件について興味があった方は、物足りなさを感じるかと思われます。
ではこの人物二人についての描き方はというと、極端にどちらかに偏っているわけでもないバランスが取れていたと感じられました。
家族に先立たれ取り残されてしまったローマンと、世間から大バッシングを食らい家族とすれ違ったり精神的に酷くなっていくジェイク。
特にジェイクを演じるスクート・マクネイリーの演技に魅入られました。
事件発生時の慌て様、次第にやつれていく姿、処方された薬を吐く様等々、持ち前の演技力で崩壊寸前の精神状態に陥っているジェイクの境遇を演じきってみせました。
ローマンを演じるシュワちゃんの演技では、終盤でジェイクを刺した後に彼の家族が怯えながら座っているソファにローマンも腰掛ける場面と、クライマックスでジェイクの息子に銃を突きつけられ「撃て」と言い切るシーンが印象的でしたね。

全編通して興味深く鑑賞出来ましたが、アンビリバボーでの再現VTRの方が人物の心境、事件の詳細をもっと具体的に掘り下げてくれた分、あちらの方が楽しく鑑賞出来ました。
本作も本作で悪くはないのですが、極め付けとなる写真を目の前で落とされたシーンや、「家族を奪った事を謝って欲しい」というローマンの表明・一心をそこまで大々的に描いていなかった事から、終盤のジェイク殺害に至る動機が薄く感じる、という違和感が残ってしまうのが惜しいですね。
随所に光る演技・場面はあるのですが、実際に起きた事件を題材にした映画としては、映画・物語としての味わいが、作品としての完成度が欠けていたかな、と。