Aya

インペリアル・ドリームのAyaのレビュー・感想・評価

インペリアル・ドリーム(2014年製作の映画)
3.7
#twcn

センス良すぎ。

OPで絶対この映画はアタリだ、と思ったら

まさに凄いアタリだった。

ナット・ウルフの新作を監督すると聞いて。
2014年のマルク・ヴィタル作品を。

刑務所帰りのボイエガくんがカリフォルニアでも9割の住人がアフリカ系というゲットーの街のPJに帰る姿。
流れる音楽とナレーションがもう、完璧!!

凄いセンス。
音楽はフライング・ロータス。
間違いない。
この映画、絶対面白い。

叔父のPJに戻ればドラッグで気絶した母親、そして幼い息子がほったらかし。家主のお叔父さんにはドラッグを運べと迫られ、断ると追い出される。

ボイエガくんには弟がおり、大学にスカラシップで入る予定で、いつも「見栄えがいい方がいい」という理由でスーツを着ている。
しかもこの弟がとても頭がいいというか誠実で。
あらゆる福祉や支援に頼り、なんとかお金を集めて大学資金を貯めている。

そして、なんとボイエガくんは刑務所にいる間、本を執筆していた。

だからナレーションが詩的だったのか!
作家になりたいが、金もなく、仮釈中だからまずは仕事を見つけないと。
しかしIDも住む場所もないボイエガくんに仕事を探す方法自体がない。

彼に選択肢はない。

息子と車で暮らしているが、ある日、ボイエガくんがまともな仕事を探すために、ラップトップを用意してくれたいとこが、ギャング構想に巻き込まれ、撃ち殺されてしまいう。
しかもその場に息子もいた。

凄いいいやつだったのに・・・。

このいとこの名前が「ギデオン」ていうんですけど、ジョーダンの「バカリ」もそうだし、なんか、背負わされすぎじゃないですか?

みんながみんなギャングで、すぐにいとこの復讐をしろ、と銃を差し出す叔父・・・ここを抜け出して、息子を連れて都会に行き本や詩を書きたい。

そう願うだけだが、仕事もなく、周りはギャングしかおらず・・・そんな中でも数々のおいしい話や、金の誘惑に負けず、なんとか可愛い受付嬢に色目をつかいながら、出版社への持ち込みに成功する。

しかもソーシャルワーカーが息子の生育環境について調査にきてしまう。
八方塞がりの中、ついつい息子や弟に当たってしまう。
ちなみに母親は刑務所。

ちなみに警察のやり方も相当やばい。
事件解決のためなら死んでもいいみたいなやり方やばすぎる。

ボイエガくんの良いところは同じ過ちを決して繰り返さず、自分の夢と家族を諦めないところ。
やりきれない時もなんとか折り合いをつける「賢い」青年であったこと。

ギャングの叔父とのいざこざ、いとこを殺した奴らへの報復、壊れたラップトップ。
そして、一番遅恐れていたことが彼に起きる・・・。

皮肉にもそれが彼の作家としての才に拍車をかけることになる。
ラストの2人の顔が忘れられない。

完璧だとは思わない。
だからこそ、今作を1作目としてスタートしたマルク・ヴィタルの今後が先が楽しみで仕方ない。


日本語字幕:板垣 七重
Aya

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