めしいらず

きみの鳥はうたえるのめしいらずのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
3.5
精一杯いまを享楽的に生きようとしているのに、何故だろう、心がどうしてもそうなり切れない。社会性や自立心、人間関係のこと。親に対する思いの変化。成人しても子供っぽい時間を過ごしてきた若者たちが、いよいよ大人になりつつある。一人の女と二人の男の三角関係の微妙なバランス。男同士はついフェアな関係性を気取って余裕あるポーズを見せたりしてしまう。真意と建前の間にある齟齬に実感は薄い。最前まで人の思いは個々のものだとスカしていたのに、いざ離れてしまってから俄かに慌て始める。人を所有できる筈もないけれど、思いは相手との関係に属するものでもあるのだから、できるだけ共有していた方がいい。でも女が欲しがっている言葉を男はいつでも察せないのだ。男は誠意の見せ方をいつも間違えてしまう。最後にようやっと本音を打ち明けた主人公の姿は、無様であった分だけ女の心には誠意として届いたように私には見えた。
物語はとっても簡素。ほとんど何も起きない。でもその分だけそれぞれが心の中に抱えている葛藤がリアルに描かれていて引き込まれた。
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