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きみの鳥はうたえるのhoshのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
4.1
ここまでかっこいい日本映画はなかなかお目にかかれないんじゃないかと思った。役者のノリ、撮影、照明、編集、音楽、ロケーション全てが新鮮で刺激的。朝焼けの「青」がすごく印象に残る。

描かれるのはコンビニの買い出しや宅飲み、公園での散歩といった何気ない日常のスケッチなのに、画面は異常にリッチでクール。さり気ないロングショットや心情に合わせた人物の配置が本当に見事。現実の生活をそのまま撮ってもマジカルな映像にはならないわけで、まさに映画の魔法。普通の生活をここまで豊かに撮れることに衝撃を感じた。特に静雄と佐知子の橋のロングショットと僕と佐知子の公園のキスシーンは声が出たな。

あと会話の映し方が独特。基本的に話し手ではなくて、聞き手のリアクションを映している。フレームの外から声が聞こえる撮り方。これによって繊細な視線や、本音で喋ってない時のえもしれぬ不穏な表情を収める事に成功しているため、人物をすごく豊かに感じる。

また、3人がいる宅飲みなんかでも1人の人物に寄る、つまり引きでみんなを収めたショットを撮らないので、どこか分断された、仲間感の薄い印象を受ける。だからこそ、同じ画面に映るクラブのシーンは感動的なんだよな。フレームに映る人数がドラマに直結している。ロジック的に映画を見る喜びが詰まっている。

この映画、3人の奇跡の時間。みたいな空気が出てるけど実際はかなり不穏だし、その停滞の空気感を出してる役者陣がまじですごい。柄本佑の生活感溢れるクズさとかめちゃくちゃ嫌だったし、染谷将太の穏やかさの中の怖さも良かった。
でもなんと言っても石橋静河だよなあ。あの色気と蠱惑的な美しさは凄い。

これだけ褒めといて点数がやや抑え目なのは、映画的ロジックに目が行き過ぎて自分がこの手の映画に求める人物への愛着が薄かった事かな。ちょっと「僕」の言動は流石に嫌悪感が勝った。
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