マチ

きみの鳥はうたえるのマチのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
3.8
ラストの僕の叫び。
あれは本来「僕」のそれまでの生き方を終わらせるための叫びであったはず。
だが、本当にモラトリアムに決別するための叫びだったのか。

ありがちな話の運びなら最後の告白はそのまま佐知子にも受け入れられていってハッピーエンドになったかもしれない。

ただ、柄本佑が演じる「僕」の告白はどこかまだ、これからもモラトリアムを続くうえで佐知子を巻きこんでいたいような印象を与える。
佐知子が離れてゆき、孤独になることで内省し、内省することで否応なく身につくであろう「世界を自分自身で選びとる決断」から逃げたい叫びにも聞こえたのだ。
本当に鳥はうたったのか。
佐知子も迷ったような困ったような素振りを見せ、結論のないまま映画は終わる。

劇中「何を考えているか分からない」「何も考えていない」といったやりとりがあったが、誰もが多かれ少なかれ若い頃に言語化できない、自己処理できない複雑さを抱えている。
柄本佑は「And Your Bird Can Sing」のようで「I'm Only Sleeping」でもある、まだ未完な「僕」を見事に演じていたと思う。

そして、石橋静河が素晴らしい。特に青い光にまみれたダンスシーン。
昼の街、夜の街を彼女は見事に着こなしていて、フレームの中の画を支配してしまっていた。
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