KSat

大人のためのグリム童話 手をなくした少女のKSatのレビュー・感想・評価

4.8
気持ちいい。自分がアニメーションに求めているものを体現したような、一つの到達点。

終始、とにかく「dessin」という単語が頭に浮かぶ映画だった。デュフィやマティスを髣髴とさせるビジュアルは一見すると、「ウマヘタ」のように見えるが、実はこれ以上ないくらい無駄のない、それでいて的確に形態や動きを捉えた、この上なく繊細dessinの集積に他ならない。動きの豊かさ、表現の巧みさを誇るアニメ映画は数多あれど、ここまで視覚的に感動を覚えたアニメ映画があっただろうか?

邦題の「大人のためのグリム童話」は余計と思いきや、本当にその通り。タイトル通り初っ端から手を斬られるリョナ展開だし、結婚して初夜を迎えた翌朝のシーツには血が付いているし、主君のためなら山羊の目を抉るし、豊かな実りのためなら親子でうんこだってする。生々しい表現がいくつも見られるのだ。一歩間違えたらトリアーだ。

しかし、それらも皆、美しい線がもたらす動きによって悪趣味にはならず、妙に満ち足りた気分にさせてくれるから凄い。ラストの清々しさは、筆舌し難い。単なる寓話を超えている。
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