薔薇

支那の夜 蘇州夜曲 前篇の薔薇のレビュー・感想・評価

支那の夜 蘇州夜曲 前篇(1940年製作の映画)
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伏水修監督。
上海の街中で絡まれていた抗日中国人・桂蘭を救った長谷が彼女の日本人に対する誤解を解こうとする。

THE•国策映画な作品だった。大スター長谷川一夫演じる長谷は真面目で勤勉なテンプレ国策映画日本人役で、彼に諭される抗日なヒロイン桂蘭を演じるのが中国の大スター李香蘭(山口淑子)。

個人的には全体的に見ると真面目というか、ただのツンデレラブコメ映画という印象しかない。1940年当時からこんなテンプレラブコメ展開があったのが史上最強に驚いた。風呂入って綺麗になった桂蘭を見て一目惚れする長谷のシーンの演出は流石に(驚きで)笑った。

とはいえ当時の上海ロケの迫力は凄い。言ってみればこの前見た亀井文夫の『上海』の上海そのものだから。瓦礫の風景や、野原の戦没者の墓が表現する虚無は国策映画を覆す。とまではいかないが、辛いのはどっちもどっちだよと日本側が諭す感動のシーンを濁す事には成功してる。

終盤の展開、たったの一言には映画館中の人達大爆笑。ラブコメ展開の後のシリアス展開はギャグになる。その後のまさかの大アクションシーンが尋常じゃない。あの爆発は『TENET』の比じゃない。危ない。

5、6個のジャンルがごちゃ混ぜになっているが、それぞれの見せ場がそれぞれある面白い国策映画だった。
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