みてべいびー

マザー!のみてべいびーのネタバレレビュー・内容・結末

マザー!(2017年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

この映画の主題は宗教だ、と観終わった直後に漠然と思った。ずっと観たいなぁ観たいなぁと思ってたから、やっと観る機会作れてよかった。もっと猛烈にグロくてゾワゾワする感じかと思いきや、結構観やすかった。確かに妊婦さんにはおすすめしないけど、不条理さも置いてけぼりにされるほどじゃないから全然ついていける。
Jennifer Lawrence演じる妻の作品とも言える修復中の家は、我が物顔で侵入する他人に踏み躙られ荒らされていく。家の崩壊は彼女の心の状態と呼応している。一方で旦那のJavier Bardemは、彼女の不幸を糧にするかのように詩集を書き上げ、人々から神のように崇められもてはやされる。女性は無視され、創造性をも否定され、やっと恵まれた我が子も家長父制社会の餌食になっていく。最後抜け殻になった彼女からの赦し、愛を非情にも取り立て、勲章のように飾って自己陶酔に浸る男。そしてまた別の女性が犠牲になる、その繰り返し。男が誰であろうが、女は取り替えの利く存在に過ぎず、男としての自尊心を補ってくれる媒体以上でも以下でもない。
一言でまとめると、この作品は宗教に基づく女性蔑視的慣習や社会による女性性、母性の搾取を批判しているんだと思う。神から見た人間の悪徳を描いているって言う意見もあるみたいだけど、私の個人的見解としては人々が指針とする宗教(主にキリスト教)の起りである聖書をそのまま描写している気がする。だから人間の悪行が示されているとすれば、それはあくまでその宗教の教えが生んだ連鎖にすぎない。
お前は神か?神なのか?と問いただしたくなるくらい「シェア」と「赦し」を説いてくる旦那。現代の物語として置き換えたら、聖書の内容ってこれだけ不道徳で非倫理的なんじゃないの?イエスを一般人に喩えたら、ヒロイズムに駆られて妻を顧みないただのエゴイストなんじゃないの?そうゆう男の生き方を正当化してきたから、今でも女性は虐げられ続けてるんじゃないの?って今まで普及してきた宗教的教義に疑問を呈しているんだと感じた。それか、それらの教えを自分たちに都合のいいように解釈してきた男性たち、家長父制度への警告。途中突然家が戦地のようになるのも、宗教がもたらしてきた戦争を揶揄しているんだと思う。
何が一番怖かったってMichelle Pfeifferね。私だったらもっと前にブチ切れて追放してる。あと人が殺された部屋を子供部屋にするのだけはやめた方がいいよ、って心からツッコんだ。知らない人がズカズカ家に入ってくる夢を前見たことがあって、その気味の悪さをすごく思い出した。状況に抗えず、目の前の出来事をただただ見てることしかできない無力さも悪夢の中に入り込んだみたい。本当は3.8でもいいぐらい好みだったけど、visual effectsが所々ちゃっちかったからこの点数。
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