April01

マザー!のApril01のレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
4.2
ジェニファー・ローレンスを至近距離で追うカメラワークが少し疲れる、と思いながら観始めて、途中の繰り返しにいつまで続くのこれ、と思いながら、ラストで、あー、そういうことか、とわかった瞬間に涙がダラダラ。自分の心にかなり刺さる!

アダムとイヴ、カインとアベル、神の名のもとに繰り返される悲劇。
キリスト教をモチーフにしているストーリーは監督の意向としてはとても壮大なものでありながら、細かいエピソードがグッときたのは、キリスト教が身近でありながら、それの持つ偽善性ゆえの懐疑的視線を体験として持つパーソナルな境遇によるところが大きいかもしれない。

実際、家というものに対する感覚、そこに侵入してくる他者、そいつらを受け入れる彼、その裏で大事なものを侵されて怒る彼、そういうエピソードがすごく身近に感じて、自分が経験した(もしくはしている)ことそのもののような気がして見ながら全然他人事でない。

監督の意図するところと違うかもしれないけれど、自分には消費される女の話、とも感じられ、忘れたようで実は忘れていない個人的な小さな体験が蘇ってくるかのよう。

特に彼が「すぐ戻る」と言いながら実際にはすぐ戻らないこと。これの繰り返しがクドイだけに、意図的なそのクドさ、刺さる!
そう、これがアルアルなんですよ。別にキリスト教の話ではなくても普通に溢れてる偽善で、本当に象徴的だと感じる。これ系の個人的なエピソードなら山ほど挙げられるぞ!と思い、ピンポイントで自分の心の中に眠る思い出を掘り起こされるかのよう。

聖書が云々という博識系ウンチクではなく、個人レベルですごくシックリくる作品。
裏を返せば、クリスティアニティが常に身近だけどクリスチャンではないからこそ、身近なものを俯瞰して見るような感じで本作で描かれるエピソードが個人レベルで迫ってくるのかな、とも思う。

作品の壮大さを矮小化するようで申し訳ないと思いつつ、作品の中で起きていることは、リアルな生活の中で覚えのあることばかりな気がする。

その点は監督さんに謝りたいけれど、作品に何を見るかは観る者の自由であり、そこに優劣はないという考えなので、自分は多分、監督の意図しない低レベルな鑑賞者であることを踏まえつつ、さらにそんな自分に褒めてもらっても嬉しくないだろうなと自覚しつつ、素晴らしい!と恐らく違う視点からの賛辞を贈らせて頂きたい。
アロノフスキー監督、自分にはすごく響いた!!!
April01

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