せいか

マザー!のせいかのネタバレレビュー・内容・結末

マザー!(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

5.14、Amazonビデオで動画レンタルして視聴。
私にはつまらんかったです。

母の日なのでとかいうことは全くない中、鑑賞する。もっと母なるものに焦点当てたホラーなのかと思ったら軸がない薄っぺらな謎を込めた作品くさく、ずっとイライラしながら観ていた。何を乗っけてるかは露骨なので、聖書の話してるんだなというのは分かるけど、乗っけ方が雑てごちゃごちゃしてるし(アダムとイブとかカインとアベルとかがいるけど、同時進行的に出エジプトの十の災いなり黙示録的なのやってたり?)、もしやそこで満足してない?みたいな感じなのだなあ。

主人公の夫は多分、いわゆる神の立ち位置なのだろうけど(でもなんこそれもそう言い切れない立ち位置なんだけど。色んなの混ぜ込んでないかというか、三位一体だから実際一つなんだろうけど、イエスでもあるよな。妻も大地であったりマリア(マグダラのほうも含みそう)であったりとかいろいろ合体している。マリアは地母神とも結び付けられたりする存在なんで、むしろ本作では地母神プラスティアマト的な存在がマリアにされたって感じなんだろう。最初から分かるようになってるけど、彼女自身が家でもあるし)、ひらけたところに建つ大きな古い家が世界なのか、じゃあ外にある社会は何なのかというか、なんかその辺が分からない。ざっくり、これは聖書を重ねてるんだなあとすると、まあ納得できなくもないけど、細かいこと気にしだしたら粗しかない。うまく落とし込みきれてなくない? 中途半端の一言に尽きる。はー、人間は愚かなので地は破壊に満ちたのでループしますわにしろ、破壊と再生にしろ、そうする意味も分からんし(分かれよってことなんだろうけどな、この作品見てる限りだと)、神をどういうものとして捉えた上でつくってんのかも分からんし。不完全な存在としての神って認識でないと本作、成り立ちようがないような。この世界はどうやって成り立ってんのという感じである。
生まれたイエスは救いを一方的に求める人間どもに貪られるとかも歴史を振り返れば何を言いたいのかは分かるけど、ペラッペラさしか感じない。
(ので、いっそその解釈が根本的に間違ってんのかなとも思いたいのでそうなのかもしれない。)

あと、やはり聖書に則りつつも極端に描かれた他人の存在とかもこれもまた中途半端に一見わけわかんない形で破滅的に作品に登場させてるけど(好き勝手に人の家で振る舞いまくる他人たちと、妻のことを顧みずそれを異様に受け入れる夫とか)、こうしたらいかに不条理でもいいというのだろうかというか。たぶんこのへんの折り合いのなさとか、他人のこと考えられない押し付けがましさ、図々しさみたいなのはリアルにあることだとは思うし、そういうの描きたかったんだろうなとも思うけれど。
特にアダムとイブの存在から始まる家の不安定状態だとか、人間たちがこの家で好き勝手に好意に甘えては争うだとか、混乱状態の中に絶対イブがいるだとか。このへんも極端な解釈(だけど一般には分かりやすいんだろうか)だなあとしみじみ思わされた。
ただ、この点に関しては、家の平穏を守りたい妻に対して、与えなさいの精神で実際は家のことは何もしない夫というように描かれてる点なんか皮肉が効いててそこは面白かったけれど。

(イエスの家とするべく)完璧な家をつくりたい妻と、仕事が行き詰まっている夫がいて、二人は決定的に破局こそしてないけど意思疎通もままらないのでトラブルが起きるしそれはろくに解決されないままで生活は破滅へと向かっていく。子づくりも後回しにされ続けて黙々と理想を形作る家のリフォームに精を出すというのもそれだけ見るとなかなか怖くはある。

たぶんそうしたものどもを現代社会に被せてきてるんだろうなあとも思うけど、いかんせん私の頭ではわけが分からんというか、やはり軸足が分からんというか。取り敢えず絶望感でも感じれば良いのだろう。
思わせぶりな聖書要素抜きにして、家庭をもつこと、営みを行っていくことに対する先行きの不安さみたいなものを母親を中心にがっつりドラマで作ってもらいたかった感じがする。
多分、本作は妻の心象風景みたいなのを描いたものと言えるのかもしれないし、思い切って建て直すこともできない一つの場所を地球なりもっと小さい規模のものなりの代わりとして置いて、それが踏み躙られるということを描いてもいるのだろうけど、とにかく話の収まりが悪くて観ててイライラしてくる。助けてくれ。

宗教、特にキリスト教をグロテスクに捉えてこう描きましたって感じ。
神も何もかも何も学ばずどんだけ愚かでもやり直せば無問題だけど、(やり直すたびに妻の肉体から欠片を取るとか)限りある資源は大切にというか、何を目指してんのかというか。旧約世界の神だからこそこの冷たさと捉えればいいんだろうけど、そこに話が留まってたわけでもなさそうな気もするのでわけがわからん。何もわからん。
私自身は森羅万象世界にあるもの全て存在してるのが誤りだと思ってるので、何も存在しないのが一番だよねと改めてしみじみ思うけど、まさかそれを目指した作品でもあるまいし。

なんだこれ。

世界に対する懐疑趣味を持ち出したのかなあとか、実際のところ特に何もしない愛のない神と、自分で考えることをしない愛のない人間たちみたいな。そして主人公も私は生産的なことをしているとか、ちゃんとしている、愛しているみたいな態度ではあるけど、やはりどこか歪ではある(イエスも愛のある二人の結びつきによって生まれたわけではなくて、あくまで仲違いした二人がそのまま性欲にもつれこんでできてたり)。この三つの在り方がそのままで延々と限界が来るまで虚しいループをいたずらに繰り返すだけで救いのない話ではあるんだろうし、人間社会も同じように新約後の世界だろうがなんだろうが虚しい繰り返しを演じながら破滅に向かっていると言いたいのだろう。
人類最初の殺人の流血によって床に血が染みて彼女(=家)の胸の内の傷が開くというか、家の位置的に子宮とか、旧約世界の地下世界である陰鬱な死の国といったものの暗喩なのかもだけど、両者が悪魔合体して作品に落とし込まれてそうな気もする。セックスに至ったのも人間たちのどんちゃん騒ぎの果てのことなんだし。何というか、子供ができることに対しても罪罰みたいな思考が強いというか。
やり直すときの夫の笑いとか、残酷で無能なものを感じはする。本作、新約聖書の要素も取り込まれてはいるけど、決定的に終末思想とかもだけど、「救い」の存在がないと思う(夫はイエスの要素も含んでるからそれを思うとすごいことやってるなとは思うが)。ただ無意味に繰り返しを(たぶん)発生させているだけ。
家にまずアダムとイブを招くことが回避できたら家自体は平穏なのだろうけど、なんの展開もなく最冒頭の様子が平行線で続くだけで、まず子供は生まれることもないのだろうし(だってイエスは人類の営みの先に誕生する、罪を背負い人々を救う存在として在るのだから、何もなければ生まれもしない)。夫は他人との接触を望み、刺激を求める。でも自分の行動を変えはしない。何もない平行線か何かある平行線かでどっちも地獄なのだよなあ。何もない平行線時点が実はエデン状態なのだろうけど(そしてそれはアダムとイブによって破壊という形で本作は表現されていく)。
神ですら存在しないほうがいいくらいの世界になってるので(それはそうだなとは現実的にも思うところではあるので納得だわなのだが)、存在すること自体がそもそも間違っていると言いたいのかなと思ってしまうのだけど、ほんとにそのつもりで作者は作ってるのかしら。わからん。確かに旧約の神とか、なかなかがなかなかに思えるので、そういうことになるよなとは思うけど。

本作と離れたところで雑にいうと別に強く禁じられてたわけではなく(試し行動みたいなとこあるなあとは思うけど)善悪を知ることで神の庇護の下の安寧から離れて自分たちの力で発展することを余儀なくされたし自らそうしたのが人間たちなんだと思いますけど、
ここで本作に話戻すと、さりとてあんだけベタベタしてくるのはああいうふうにそりゃ気持ち悪く捉えることもできるわなではある。ただ本作、その前提部分もなんかもう脂っぽいばかりなんですが。

でもやっぱもう一歩そこでさらに踏み込んで読み取れるんだろうなとは言語化ちゃんとできてないだけでフワフワ思ってはいる。いるけど、星一つもやらない点見ていただければ分かるように私にはつまんなかったので、どう転ぶにしても思考を割きたくない気もする。おごご
この監督が関わったことがある作品で他に観てるの『ジャッキー』と『ブラックスワン』の二本でどっちもかなり(だいぶ)好きなんですけど、本作はどうしたところでペラペラ感が勝るのではと思ってしまったのだけど、多分私が読み取れてないところで何かあるんではないかという可能性はあるのよな。
というか、三作ともすごい後ろ向きな作品よな。完全にそうとは言えないけど(彼一人がつくってるわけではないので)、どれも類似点はあるわよな。内側が空っぽで冷たいものという感じ。やっぱり世界に対する懐疑があるよな。
あとどれも女性であることは中心にあったけど、直近の関連作品かつ話題作は主人公男性なので、そこでちょっと気になってきたわね。あれもかなり前からチェックはしてるまま放置してるけど、観るつもりはある。いつか。

あと多分三作とも背景にはアメリカというものがあることが欠かせないとも思うんですよね。結局、マザー!もそこはあると思いながら観ていたけど。

字幕、はっきり音声だと「jesus house」って言ってたように聞こえるところを「彼の家よ」としてたのにひっかかる。his houseと音は近いけど。多分、そこ本来は観ながら頭の中にひっかかるポイントとして機能するようにあったんではないかと思うが。
せいか

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