あでゆ

マザー!のあでゆのネタバレレビュー・内容・結末

マザー!(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

郊外で穏やかな暮らしを送っていた夫婦の家に、謎の男が訪ねてきた。妻はその男に不信感を抱いていたが、夫は快く迎え入れた。その日から、夫婦の家には代わる代わる訪問者がやってくるようになった。「このままでは何か良からぬことが起こる」という妻の訴えを真剣に取り上げようとしない夫だったが、彼女の不安はやがて現実のものとなった。

君は”家”である。そして”家”とは”私”にとっての「地球」であり、「聖母」であり、「女」でもある。(穴は女性器?)
後半で宗教ごっこが始まるまで全く気づかなかったんだけど、本作は見事にめちゃめちゃ短いスピードで人類史を再現している。地球のもとに現れるアダムとエヴァ、人が扱う「火」、初めて殺人を犯すカインとアベル、産まれるキリストと書き上げられる二冊の聖書、それを基に始まる宗教と戦争、奪われる資源、そして崩壊する。

つまりは”私”とはヤハウェであり、”彼女”はマリアだ、そして”彼女”は”家”でもあるから、”地球”でもあるということになる。うーんなんだかややこしい。家の修繕にも使っていた粉を自分の回復にも使うという部分が、その解釈をより強固にさせる。
本作ではカメラがジェニファー・ローレンスの顔の外から一切出ないというのも象徴的だ。それこそ彼女が家から出ることが一切できないように、私達は地球の上でしかこの物語を観ることができない。

ただ本作が本当にすごいのは、そのマクロなテーマに重ねるようにして、男に消費される女という非常にミクロなテーマをも同時に語っているという所。物語ラストと冒頭での女性はジェニファー・ローレンスではない。要するにこれ、前の恋人との思い出(クリスタル)を引きずりながら、恋人を乗り換えてく男の話でもあるんだよな。女は元カノに傷ついた男を癒やしていくが、結局は裏切られていく。
もしかしたら創作に執念を燃やす監督自身のことなのかもしれない。
なんかこの映画を稀代のハメ撮り女優ジェニファー・ローレンスがやってるっていうのもなにか悪い意図を感じてしまう。

男の恋愛観は上書き保存ではなく名前をつけて保存だ、みたいな話で、何度繰り返しても何も成長しないクソ男の輪廻の話でもある一方、地球上で何度も戦争とか環境破壊を繰り返して学習できないアホ人類の話にも見えてきて、この物語の語る幅みたいなものが僕の想像できる範疇を越えた多層性を持つことがよくわかる。まごうことなき傑作。
劇中でも「作品は受け手によって変化する」というセリフがあるが、まさにその通りの作品だろう。

ただ難解すぎて劇場公開できるわけねえわ。まだまだ気づいてないことがある気がするし、二回は観る必要がある。
一方で、途中まで意味不明すぎても描写が豊かで飽きないし、意味不明すぎるがゆえにめちゃくちゃ続きが気になるというエンタメ性も本作にはあるけれど。
そういえばキャットウーマンの人が出てた。
あでゆ

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