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マザー!のOotzcaのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
4.8
世界中で同時多発的に起きている様々な社会問題と歴史的なタブーにまで踏み込んで、それらの価値をぶっ壊す傑作

倫理観や道徳観がイカれた演出は、そうすることで本来あるべき姿を浮かび上がらせるのには、この映画においては最適な手法

確かにあまりに過激で挑発的な超問題作だし賛否両論起こったり上映禁止になったりするのも無理はない異色のサイコ・スリラー

人里離れた郊外にポツンと佇む一軒家に暮らす夫婦のもとへ突然見知らぬ男が訪ねてきてから音を立てて平和な生活が崩れ出す…というお話

なんですけど、これはサイコ・スリラーの姿を借りた、痛烈な現代社会批判になっていて、共産主義幻想、グローバリズムにおける新自由主義、右傾化していく権力、民族間紛争、テロ組織、カルト集団などなどを、痛烈なブラックジョークを混じえつつ晒しあげていき、最終的には誰もが知る世界宗教を生んだあの歴史上の人物さえをも、真っ二つに斬ってみせる

何が起こるか不穏な序盤、なるほどこういう展開かと納得させるような中盤、ひと言で表せばカオス!な怒涛の展開の終盤、やっぱりねと膝を打つラスト

妙に不穏な空気が支配する緊張感と、いま画面の中で何が起きているのか必死で処理するので、弛れる時間はなく二時間も一気でした

ダーレン・アロノフスキーは『ブラック・スワン』もなかなかシンドい胸糞映画でしたけど、今作も随所に『ファニーゲーム』を感じる程度には、特にラスト手前は胸糞演出のラッシュなので、苦手な方はお気をつけて!
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